研究課題/領域番号 |
16K05648
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
齋藤 大明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (40506820)
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研究分担者 |
水上 卓 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50270955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 分子動力学法 / 分子ドッキング / 機械学習 / タンパク質 / 自由エネルギー |
研究実績の概要 |
高精度リガンド-タンパク質質の結合構造予測を目的に「機械学習と分子シミュレーションの連帯による標的型分子ドッキング法の開発」を行う.具体的にはアポ型タンパク質の分子動力学シミュレーションを用い,(1)結合ポケットの形状変化を含めたレセプターの「アンサンブル構造」をサンプルする.これらレセプター構造に対して(2)機械学習アルゴリズムを用いた結合ポケットのリガンド会合性判定を行い,ドッキングさせるリガンドとの構造や相互作用の補償が良いレセプター構造の選出を行う.最後に選出したレセプター構造に対して,レセプターの結合サイトの構造変化を考慮した(3)分子ドッキング計算と結合自由エネルギー評価を行い,高精度なリガンドの結合構造予測を実現する.開発した計算手法を(4)創薬対象の重要ターゲットタンパク質に適用し、分子スクリーニングによる新規のリード化合物の特定と最適化を行う。本年度は(3)の研究課題に取り組み,タンパク質の結合ポケットの形状サンプリングと機械学習を用いたリガンド会合性判定を計算アルゴリズムの開発も含め実地した.前年度に実施したMD計算で生成したアンサンブル構造に対する 分子ドッキングと相互作用の評価から,最適なリガンド結合構造の特定を試みた.さらに,ドッキング後のリガンド-タンパク質複合体構造に対して構造最適化を行った。これにより分子ドッキングによる基質の誘導適合結合が表現され,より高精度な結合構造予測が可能となった.分子ドッキング後は計算によって得られた上位ランクの結合ポーズに対して,自由エネルギーレベルでの相互作用を評価し結合構造予測の精度を向上させた.開発した分子ドッキングシステムを用いて,タンパク質の結合ポケット形状の違いや,誘導適合モデルへの効果について十分な検証計算を行い,計算に用いるパラメータの最適化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドッキングによって予測された全ての基質配座のスコア値(結合自由エネルギー)をRMSD値に対してプロットした結果、RMSDの値が小さくなるに従って結合エネルギーが低くなる結果が得られ、開発した手法の有効性が示された。最も結合エネルギーが低かった時のリガンド分子の結合構造のRMSD値は結晶で解かれた基質配座とほぼ一致する結果を示した。 機械学習モデルに関しては,いくつかの記述子を用いたモデルの検証を行っているが,高精度の予測モデルとするには,さらなるモデル・計算パラメータの検証 が必要となる。これらは今後の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
機械学習を用いたレセプターの結合ポケット形状のDruggability判定の計算アルゴリズム開発を行う.実験により解かれた様々なリガンド-タンパク質質の 結晶構造やドッキングによって得られた結合構造をデータソース(正解データ)として,レセプターへのDruggableな結合ポケットの特性を学習させる.また最終年度は様々なリガンド-タンパク質系への適用・応用計算を行い,開発した手法の有効性・汎用性について検証する.創薬対象の重要標的タンパク質への分子ドッキング計算を実施し,新規のリード化合物の特定と化合物の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題研究を実施するための計算機を購入するために物品費を申請していたが,外部施設の計算機利用の申請が採択されたため,新たに計算機を購入する必要がなくなった。差額は次年度の国際学会への参加のために使用する予定である。
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