研究課題/領域番号 |
16K05649
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
山本 晃司 福井大学, 遠赤外領域開発研究センター, 准教授 (70432507)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 遠赤外 / 金属導波路 |
研究実績の概要 |
金属導波路の平行平板間に、グリースで分散させた粉末結晶を挟み込むことで、遠赤外領域(100 ~ 400 cm-1)の透過吸収分光を検討した。分光器は、遠赤外FT-IR(FT/IR-6100, 日本分光)を使用し、金属のテーパー角度や、金属平行平板長を変えた3種類の金属導波路を作成した。金属導波路を透過する遠赤外光が10%程度であり、テラヘルツ領域における透過率と比較して透過率が著しく低下した。遠赤外光が金属平行平板を伝搬するときに流れる金属表面電流によるオーミック損失の影響によって遠赤外光の透過率が低下するが、今年度の実験によりこの効果は小さいことが分かった。遠赤外分光器の焦点において、遠赤外光源であるセラミック光源のイメージが10ミリ程度と大きいため、金属テーパーによって遠赤外交を効率よく集束されていないことが示唆された。 金属導波路の最適構造を検討するために、FDTDシミュレーションを遂行する環境を整え、その計算結果を得るに至った。直線状のテーパーに対して、テラヘルツ領域の電磁波が効率よく集束すること、一方、周波数が高くなると集束効果が低下して行くことがわかった。この効果は、波長が大きい場合には、金属と接する面において電場の面平行成分がゼロになる効果と、面垂直の電気力線の曲率が、電磁波の波長に関係することが影響していると考えられる。これらの考察から、ホーン上のテーパー構造の導入が必要であることが示唆された。 また、タンパク質水溶液のテラヘルツ時間領域分光測定の予備実験を行い、新たに作成した金属導波路を用いたテラヘルツー遠赤外領域の分光測定に取り掛かる準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金属導波路を遠赤外分光器に適用することで、透過率の低くなる原因を推察することができ、新たな金属導波路の設計を、FDTDシミュレーションにより検討する段階に至っている。また、タンパク質水溶液のテラヘルツ時間領域分光測定の予備実験を行っており、新たに作成した金属導波路を用いたテラヘルツー遠赤外領域の分光測定に取り掛かる準備が整ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
金属導波路の平行平板間に、流路を作成した薄膜樹脂を挿入し、外部から液体試料を交換することが可能な金属導波路を作成する。流路の幅はテラヘルツ波が水溶液試料を透過する距離となり、その流路を作成する。流路が変形しないこと、均一フィルムとして入手が可能であること、および、テラヘルツ領域の吸収が小さいことを考慮して、樹脂にポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)を用いる。この金属導波路を、テラヘルツ時間領域分光装置の試料位置に配置し、テラヘルツ測定を行う。外部から水を流路に送液することで得られる水のテラヘルツ吸収が、真の水のテラヘルツ吸収スペクトルと一致することを確認する。次に、糖の水溶液に対しても同様な実験を行い、定量的測定が達成できていることを実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を行う上で必要となるフェムト秒パルスレーザー励起光源を、前年度の経費を全額を利用して導入する予定であったが、実験室の確保などに時間を要し、次年度である29年度に導入することになったため、全額が未使用となった。ただし、もう一つの研究課題である遠赤外分光への応用は、現有する装置で研究を推進したので、計画に合わせた進捗状況である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は実験室の確保も完了したので、フェムト秒パルスレーザー励起光源の導入でほとんどの経費を使用する。
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