「分子間相互作用の影響を受けやすい」として知られている官能基のうち,ニトリル化合物のCN基,ヘム鉄に配位したリガンドなどを対象に,振動数・赤外強度の変化が溶媒水分子との水素結合構造にどのように依存するか,振動シュタルク効果やNMR化学シフトとはどのように相関しているかを,電子構造的由来を含めて解析した。その結果,ニトリル化合物のCN基については,水素結合形成による分光学的性質の特異な変化が,従来の議論とは異なり,静電環境の均一/不均一性に由来するものであることを明らかにした。そして,その他の例を含めて3現象の統一的な理解を得るとともに,静電相互作用モデルの構成法を提示した。
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