研究課題/領域番号 |
16K05660
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本田 宏明 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 学術研究員 (80404044)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スクリプト言語 / 学習向け分子軌道法プログラム / プロトタイピング向け分子軌道法プログラム / 分子積分 / CSFベースハミルトニアンエネルギー表式 |
研究実績の概要 |
小原の分子積分に対する一般漸化表式を利用し,分子軌道法プログラムの分子積分ライブラリをC言語により実装した.また,分子積分呼び出しAPIを整備し実装することで,外部プログラムから利用可能なモジュールとすることが出来た.具体的には,分子積分の種類として重なり積分,運動エネルギー積分,核引力積分,電子反発積分を実装し分子軌道法のエネルギーを計算することを可能とした.外部インターフェースとして,C や Fortran,Ruby,Python言語を準備し,現在頻繁に利用されるプログラミング言語から利用可能とした. ハミルトニアン行列生成のためのCSFベースエネルギー表式計算ライブラリの開発として,佐々木による Tensor-recoupling 法を分子対称性向けに再定式化し,これに基づきプログラムを作成した.また,このプログラムとDRTを利用したCSF生成法を組み合わせることで,Full CI ならびにSecond-order CI のCSFに対するすべてのハミルトニアン行列要素を求めることを可能にした.ただ,5000次元以上のエネルギー表式生成の場合では実行時間が問題となったため,エネルギー表式生成の際に,軌道数の多い External 部分に対しSymbolicアルゴリズムを適用することで実行時間の大幅な削減に成功し,C言語実装とも組み合わせることで,50000次元の計算にも十分利用可能であることを示した. ライブラリのドキュメント化については,Ruby 付属ライブラリであるRDocや種々のプログラミング言語から利用可能なDoxygenを利用して自動ドキュメント化可能とした.これにより,ほぼすべてのライブラリ部分の関数のドキュメントを生成した. また,2つの学会において成果の発表を行い,国内の4研究室において,大学院学生向けに作成したプログラムの講習会を実施し,利用促進に向け活動した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の当初予定では,プログラム全体の各モジュールの API を設計し,これに基づきプロトタイピング環境の根幹である分子積分とハミルトニアン行列エネルギー表式生成のプログラムを作成することであった. これに対し,分子積分実装については種々の分子積分タイプを実装することが出来,分子積分計算の最も重要な全波動関数の電子相関を考慮したエネルギー計算を可能とすることが出来た.これに付随しRubyやPythonから利用可能な APIを準備することでC,Fortran,Ruby,Pythonから利用可能な分子積分モジュールを準備することが出来た. また,エネルギー表式プログラムについてはすべて実装し動作を確認した.しかしながら実行時間に問題が有ることが分かったため,プログラムを高速化するためのSymbolic 表式を新たに追加開発する等の工夫を行い,実用上問題のない性能とすることが出来た. そのため全体として概ね予定通りといえる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した分子積分ならびにハミルトニアンエネルギー表式生成プログラムを利用し既存のGSL/BLAS/Lapack線形ライブラリの利用環境と組合せることで,RHF計算や積分変換,CI計算,MP2, 4 計算を可能とする.これらの計算をすべてモジュール化し,Ruby や Python のスクリプト言語から利用可能とする. 本年度プログラムを開発し,講習会を実施した上でプログラムの利用者から要望の多かったプロパティ計算向けの分子積分の実装を開始し,分子積分開発の継続を行う. また,並列計算について,ACPやMPI通信ライブラリを利用した実装を行い,特にRHFの並列計算計算における性能評価を行う. プログラムの利用促進のため,学会発表並びに研究室を訪問しての利用講習会を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿のための英文校正費を計上していたが,その代わりに学会発表にて公表したため.
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次年度使用額の使用計画 |
学会発表分もまとめ,次年度に論文投稿を行うために利用する.
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備考 |
国内における量子化学研究をしている4研究室において講習会を実施した. 研究セミナーを含む発表後,主に大学院生にプログラムの説明し実際に使用してもらい,プログラムを配布した.さらに今後のプログラム開発のための意見を聞いた.
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