• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

DNA導電メカニズム解明に向けた塩基配列と電子状態の関係解明のための理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K05666
研究機関城西大学

研究代表者

寺前 裕之  城西大学, 理学部, 教授 (10383176)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード結晶軌道法 / ポリヌクレオチド / 電子状態 / 電気伝導性 / 価電子帯 / 伝導帯 / ポリモノヌクレオチド / らせん構造
研究実績の概要

DNA中における糖鎖およびリン酸・アルカリイオン対が特に導電性に関してどのような影響を及ぼしているかを検証するために、最も簡単なB型DNAモデルとしてのポリモノヌクレオチド、poly-(dG)poly-(dC)およびpoly-(dA)poly(dT)ポリマーから、リン酸・アルカリイオン対を除いたポリマーについて計算を行い、比較を行った。これは計算によるシミュレーションであることで可能になったことである。
グアニン・シトシンあるいはアデニン・チミン各塩基対を螺旋状にポリマーにしたものに糖鎖を付加しても、価電子帯トップおよび伝導帯ボトム近傍のエネルギーバンド構造はあまり変化せず、電導性に関しては影響は無いと言える。さらにこれにリン酸・アルカリイオン対を付加することでモデルDNA鎖となる。ここで初めて、伝導帯ボトムはほぼ値がゼロとなり、エレクトロン伝導の可能性が出てくる。また、特にグアニン・シトシンのペアでは価電子帯トップの位置がΓ点から0点に移動することが判明した。アデニン・チミン対ではこのようなことは起こらない。またpoly-(dG)poly-(dC)およびpoly-(dA)poly-(dT)の二種類に対する有効質量の計算によって隣接セル数の不足が示唆されたため依存性を調べる計算を行ったところ200隣接セルまでを考慮してもうまく収束していないことが判明した。これに関しては新たな理論発展が必要かもしれないと考えられる。
以上の結果についてはギリシャで毎年開催されている国際シンポジウムであるICCMSEでの招待講演および国内では日本コンピュータ化学会と分子科学討論会での口頭講演で研究発表を行い、またJ.Comp. Chem, Jpn誌およびAIP Proceedingsシリーズへ論文投稿をを行って受理・出版されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

作成したプログラムを用いて昨年度の進捗状況において、懸案であった分極関数を含む基底関数系による計算はユニットセル内にイオン対を含むというモデルポリマーの特殊性から、何らかの対策を行わないと容易には実行できないと考えられ、またもし計算可能であったとしてもそれほどの差異は期待できないと考えられたため、一旦計算を断念することとした。またElongation法によるクラスター計算は共同研究先である九州大学の規則により報告者自身がソースコードにアクセスできず九州大学以外では実行できない事が判明したために、当面は断念せざるを得ない状況となった。
poly-(dG)poly-(dC)およびpoly-(dA)poly-(dT)の二種類に対する計算ならびにこれらのポリマーからリン酸ナトリウムを除いたものの計算を行って、イオン対がどのような影響を及ぼしているかを調べた。さらにブリルアン域における0点やガンマ点など軌道関数が実数となる場所について、計算結果をGausviewプログラムへ受け渡すプログラムを作成して結晶軌道をGausviewを使用して描画できるような環境を整備して、軌道の変化を考察しやすくした。
イオン対によりバンド構造は大きな影響を受けており、特にpoly-(dG)poly-(dC)については価電子帯上端がガンマ点から0点に移動し、より影響が大きくなることがわかった。その際には、最高価電子帯は0点で不安定化してガンマ点でよりエネルギーが高くなることにより、より平坦な構造となり結果としてホールの有効質量が増大することもわかった。ここでは結晶軌道の局在化が0点で起こっていることも結晶軌道の描画により確認することができた。

今後の研究の推進方策

DNA中においてリン酸・アルカリイオン対の他に糖鎖が導電性に関してどのような影響を及ぼしているかを検証するために、poly-(dG)poly-(dC)およびpoly-(dA)poly(dT)ポリマーから、リン酸・アルカリイオン対および糖鎖を除いたポリマーについて計算を行った。さらに二重らせんではなく一本のらせん構造を2つ計算してそのバンド構造の和と二重らせんを比較することで塩基対の間の水素結合の働きについて解析を行った。これらは計算によるシミュレーションであることで可能になったことである。
これらの計算対象を現在のポリモノヌクレオチドだけでなく、6種類あるポリディヌクレオチド種類のポリトリヌクレオチド、poly(dA-A-T)・poly(dA-T-T), poly(dA-A-C)・poly(dG-T-T), poly(dA-G-T)・poly(dA-C-T), poly(dA-G-C)・poly(dG-C-T), poly(dG-A-T)・poly(dA-T-C), poly(dG-G-T)・(dA-C-C)にも広げていく。ポリディヌクレオチドに関してはイオン対と糖鎖について、また一本鎖との差についてポリモノヌクレオチドとどのような差があるのか大変興味深い。
またもし余裕があれば、大規模すぎるためDNAの計算は行うことができないが、現在のポリマー計算プログラムを用いて分子動力学計算を行うプログラムを書くことができればと考えている。例えば、ポリアセチレンは合成当初はシス型だが、その後速やかにトランス型に変異するとされており、分子動力学シミュレーションにより再現できれば興味深いと考えられる。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
出張旅費に関しては、飛行機運賃が予定していたよりも安価に収まったため予算額を30万円程度下回った。人件費および消耗品類に関しては、当該年度については、利用しなかったため未使用となった。
(使用計画)
消耗品類としてハードディスク等の購入を行う。海外出張や国内出張については、より積極的に機会を作り成果の発表を行っていく予定。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] An Attempt at Ab Initio Crystal Orbital Calculation of Electronic Structure of B-type Model-DNA2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Teramae, Yuriko Aoki
    • 雑誌名

      AIP Conference Proceedings

      巻: 1906 ページ: 030023

    • DOI

      https://doi.org/10.1063/1.5012302

    • 査読あり
  • [学会発表] An Attempt at Ab Initio Crystal Orbital Calculation of Electronic Structure of B-type model-DNA2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Teramae, Yuriko Aoki
    • 学会等名
      ICCMSE2017
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Ab initio crystal orbital calculation of electronic structure of B-type model-DNA2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Teramae, Yuriko Aoki
    • 学会等名
      WATOC 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] Ab initio calculations on polymononucleotide and polydinucleotides as model of B-type DNA polymers.2017

    • 著者名/発表者名
      Hiroyuki Teramae, Yuriko Aoki
    • 学会等名
      EUCO-TCC 2017
    • 国際学会
  • [学会発表] フェルラ酸の抗酸化作用に関する理論的研究2017

    • 著者名/発表者名
      寺前裕之、湯川満、加藤洋介、高山淳、坂本武史
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2017年春季年会
  • [学会発表] モデルDNAのHartree-Fock計算2017

    • 著者名/発表者名
      寺前裕之、青木百合子
    • 学会等名
      分子科学討論会2017
  • [学会発表] DNAの電子状態計算2017

    • 著者名/発表者名
      寺前裕之、青木百合子
    • 学会等名
      日本コンピュータ化学会2017年秋季年会
  • [学会発表] フェルラ酸の抗酸化作用に関する理論的研究2017

    • 著者名/発表者名
      寺前裕之、加藤洋介、高山淳、坂本武史
    • 学会等名
      第40回ケモインフォマティクス討論会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi