前年度までに行ったポリモノヌクレオチドの電子状態に加えて、ポリディヌクレオチドを加えて総合的にDNAモデルとしてのポリマーの電子状態について計算を行い、これらのポリマーの電気伝導性発現機構について考察した。最も簡単なB型DNAモデルとしてのポリモノヌクレオチド、poly-(dG)poly-(dC)およびpoly-(dA)poly(dT)ポリマー、並びにポリディヌクレオチド、poly-(dG-C)poly(dG-C)、poly-(dA-G)poly(dC-T)、(dA-C)poly(dG-T)、(dA-T)poly(dA-T)、の計6種類について電子状態計算を行ってバンド構造の解析を行った。ここでGはグリシン、Cはシトシン、Aはアデニン、Tはチミン塩基から派生するユニットを示している。 バンドギャップは有機半導体として良く知られているポリアセチレンなどに比べても小さな値となっており、この結果から電気伝導性が発現する可能性が高い事が示唆される。 価電子帯の上端については、グアニン・シトシン対が多く含まれているほど大きな値を持つ。従ってホールはグアニン・シトシン対が多く含まれるほど生成しやすいと考えられる。一方、ホールの動きやすさを示す有効質量を計算してみるとアデニン・チミン対が多いほど小さな値となっており、ホールの移動度については、アデニン・チミン対が多い方が有利となる。伝導体下端については価電子帯上端のような規則性は見られないが、これについては基底関数が不十分である可能性が高いと思われる。なお伝導帯下端は非常に小さな値となっておりホールだけでなくエレクトロン伝導の可能性も考えられる。 以上のように、DNAにおける電気伝導性発現が理論的にも強く示唆される結果となった。
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