表面増強ラマン散乱(SERS)および表面増強蛍光(SEF)の明滅現象の二色同時動画撮影を行った。これは、銀ナノ凝集体の表面上あるいは近傍に、同じ単一分子が存在することを示している。超解像イメージングによって解析することで、正確なSERS/SEF活性分子位置の時間変化を見たところ、励起光強度を大きくすると分子位置の揺らぎが小さくなった。これは、レーザーを照射することで波長よりも小さいような微粒子などに電気双極子を誘起し焦点方向へ引き寄せて捕捉するという、光ピンセットの現象がプラズモン共鳴によって増強されて単一分子レベルでも起きたと考えられる。実際、プラズモン共鳴が起きにくいマイクロメーターサイズの銀凝集体では、このような効果は観測されなかった。 単一分子SEFにおける超解像イメージングでは、金属ナノ構造体のプラズモンと結合することで、正確な発光源の位置がぼやけてしまうことが知られている。しかし今回は、正確な位置を表していないとはいえ、励起光強度依存性から単一分子レベルでのプラズモン増強光ピンセットが実現していると言える。 また、従来の超解像SEFイメージングでは、二段階のプラズモン共鳴が起きている方が蛍光分子の位置がぼやけて測定されることが報告されている。一方、今回のSERSでは、二段階のプラズモン共鳴が起きているにも関わらず、SEFよりも分子位置の揺らぎが小さいことがわかった。 通常の光ピンセットでの解析のように、SERS/SEF活性分子位置の時間変化をフーリエ変換して、その周波数に対してパワー密度をプロットした。励起光強度が小さいと通常通りの調和振動子的な振る舞いを示していたが、励起光強度が大きくなるとノイズ的すなわちランダムな振る舞いを示すことがわかった。後者の振る舞いは、SERS明滅現象を冪乗則で解析した結果と一致した。
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