これまでに、High Performance Computerで効率の高いシミュレーションを実行できる、分子科学計算ソフトウェアNTChemと経路積分分子動力学(PIMD)法を統合した階層的並列プログラムプラットフォームの開発を行った。そして、このプラットフォームを利用することにより京コンピュータにおいて大規模分子シミュレーションが可能となった。 新プラットフォームを用いて、低障壁水素結合(LBHB)の存在が示唆されているperiplasmic phosphate binding protein (PPBP)のモデル分子で応用計算を行い、PPBPにおけるヒ酸とリン酸の識別できる理由に迫ることができた。新プラットフォームの威力を実証することができた。 また、大規模水素結合系の効率の高い分子シミュレーションの実行を実現すべく、経路積分分子動力学(PIMD)法とマルチスケールシミュレーション手法であるHybrid Quantum Mechanics / Molecular Mechanics(QM/MM)法を組み合わせることにより、階層的並列プログラムプラットフォームの深化を図った。プログラムの開発を終え、photoactive yellow protein(PYP)分子の水素結合の性質を明らかにするために、PYP分子の大規模分子シミュレーションを一部実行することができた。 さらに、周期境界条件のQM/MM法を開発し、そのプログラムをSMASHソフトウェアに実装した。このプログラムと開発中の階層的並列プログラムプラットフォームと連携させることに成功し、より信頼性の高い分子シミュレーションを実行できるようになった。
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