クーロン爆発法を利用して、高い対称性を有する「単純」な化学種の幾何構造を決定する実験装置の開発を行った。本研究を実施する上で、共同利用施設の光源を利用可能とするための実験のセットアップの構築、特に、実験装置を可搬性に優れたものに改良し、外部研究機関で実験を行うためのシステムの構築は必須である。 後述の理由により装置開発に遅れが生じたものの、ほぼ所定の性能を有する実験装置の開発に成功した。即ち、可搬性を有する真空装置を設計・構築し、金属イオンの生成とその検出に成功した。可搬性向上のために真空ポンプをこれまでのものよりも小型にする必要があったが、差動排気室を構築することで、所定の真空度まで到達できた。また使用を想定していたアブレーション用レーザーが故障して使用不可能になったため、急遽別のレーザーを用意する必要が生じたが、これらの困難を乗り越えてイオンの検出にまで至った。これによって本研究課題での研究計画の2本の柱のうち、1番目である装置開発はほぼ達成できたと言える。しかしながら、2番目である実験装置を外部研究期間に運搬して実験を行うことに関しては、時間的・予算的都合によりそれ以上遂行することができなかった。 最後に本研究課題での反省点を述べる。本研究課題は年度途中の採択であったため、採択時点で既に異なる研究が進行中であった。しかもその研究が予想をはるかに上回る成果を挙げたため、速やかに特許出願する必要に迫られ、加えて出願済の特許の公開日との兼合いで一刻の猶予も許されない状況にあった。このため本研究課題に本格的に取り掛かるのが1年以上ずれ込み、実質的に2年弱で研究を遂行することとなってしまったため、研究計画を最後まで遂行するに至らなかったのは残念である。
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