研究課題/領域番号 |
16K05683
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
一戸 雅聡 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271858)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケイ素ラジカル / イオンラジカル / 常磁性化学種 |
研究実績の概要 |
本研究の1年目(平成28年度)では、中性3配位ケイ素ラジカルをオリゴシラン鎖で連結したオリゴシラン-α,ω-ジイル種[ビス(ケイ素ラジカル)種]の合成を行い、それらのスピン状態を解析した。オリゴ(ケイ素ラジカル)種を構築するにあたって、中性3配位ケイ素ラジカル以外のケイ素ラジカル種を用いることが出来ないか検討すべく、ケイ素=ケイ素二重結合化合物「ジシレン」のイオンラジカルに注目した。 すでに申請者らは、ジシレンのカチオンラジカル、アニオンラジカルの合成、単離に成功し、その分子構造やスピン状態の解析を行っているが、極めて嵩高いトリアルキルシリル基で対称に置換されたジシレンから誘導された1例ずつであり、それらを適当な連結子で繋いだオリゴ(ケイ素ラジカル)種に展開することは合成的に難しい。そのため、本研究の2年目(平成29年度)では、後の集積化を考慮して異なる置換基で非対称に置換されたジシレン(RA2Si=SiRB2)におけるイオンラジカル種の合成、構造、電荷とスピンの分布について検討した。 前駆体ジシレンとしてトリアルキルシリル基(RA = SiMetBu2)とアルキル基(RB = iPr)で置換されたジシレンを新規に設計、合成した。非対称置換ジシレンを金属カリウムで一電子還元して生じたアニオンラジカルは熱的にやや不安定であり、室温では数分で分解した。-30 ℃におけるジシレンアニオンラジカルの常磁性共鳴スペクトルの解析、および理論計算の結果、Si=Si二重結合に由来する部分がトランス折れ曲がり型に変形し、tBu2MeSi基が結合した3配位ケイ素側に負電荷が、iPr基が置換した3配位ケイ素側にスピンが偏在した構造であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数のケイ素ラジカル部位を連結したオリゴ(ケイ素ラジカル)種を構築する新規な素子としてジシレンのカチオンラジカル、アニオンラジカルに注目して、新規なジシレンアニオンラジカルの合成を検討した。置換基部位に酸化還元性を示しにくいトリアルキルシリル基とアルキル基で非対称に置換されたジシレンを合成し、そのアニオンラジカルの発生と物性を解明できた。しかし、トリアルキルシリル基とアルキル基で非対称に置換されたジシレンアニオンラジカルは熱的安定性に乏しく室温では分解してしまうため、単離やX線結晶構造解析による分子構造の決定などには至らず、十分な成果を得ることが出来ていないと判断される。 また、平成29年度に独立准教授として研究室を主宰していくことになったが、研究指導する学生数が2名(大学院生1名、学部4年生1名)で人的資源が少なくなったことと、平成29年12月26日に発症した病気(同日、救急搬送されて緊急手術を受けた)に起因してその後の研究活動のペースを落とさざるをえなかったことも重なって、やや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である平成30年度は、研究指導する学生が5名(大学院生3名、学部4年生2名)に増えており、人的資源が少なくなったことで未着手であった研究内容を含めて研究を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度から独立准教授として研究室を主宰していくことになったが、研究指導する学生数が2名(大学院生1名、学部4年生1名)で人的資源が少なくなり、実験に必要な消耗品などの購入が少なかった。また、平成29年12月26日に発症した病気に起因して(同日、救急搬送されて緊急手術を受けた)その後の研究ペースを落とさざるをえなかったことも重なって、当初計上していた予算を消化しきれなかった。 本研究の最終年度である平成30年度は、研究指導する学生が5名(大学院生3名、学部4年生2名)に増えており、研究の遅れを取り戻すべく研究推進の効率化を最重要視し、高額な試薬であっても市販品が存在するものについては購入するなど適正な予算執行を行っていく。
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