リン原子を複数含む屈曲型共役系分子の合成に取り組んだ。柔軟性を持つ曲面構造とリン原子のσ*軌道と芳香環のπ*軌道の共役を合わせ持つ化合物とすることで、曲面構造の変化を共役系の変化へと連動させることが期待される。ゲスト分子を取り込むことで曲面構造を制御できるホスト分子の開発を目標とする。 本年度は、申請者が過去に開発した屈曲型化合物の置換基を変えた誘導体に取り組んだ。また、2つの屈曲型化合物を連結して環状化合物とすることにより、環状のホスト分子を目指した。置換基として、ベンゼン環のリン原子のp位に水酸基を導入した新規化合物の合成に成功した。また、水酸基を有する化合物を原料に、アルキル基を有する誘導体を、水酸基をTfO基へと変換後、鈴木-宮浦カップリング反応によりアリール基を導入した誘導体を合成した。これらの誘導体の蛍光測定を行ったが、いずれも440-450 nmに極大をもつ蛍光を示し、蛍光波長に及ぼす置換基の影響はほとんどなかった。また、全ての化合物の蛍光量子収率は0.68程度となった。 水酸基のアルキル化などを用いて、2つの屈曲型化合物を連結することを試みたが、反応途中で各種溶媒に難溶性の高分子成分が生成したため、目的物の単離にはいたらなかった。
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