研究実績の概要 |
これまでに、リン原子を2つ有する曲面化合物を合成し、曲面化合物2つでフラーレンを包接できることを報告している(Chem. Sci. 2015, 6, 6373) 。曲面化合物2分子を繋ぐことで、有用なフラーレンのホストとなることが期待される。そこで、2分子をジスルフィド結合で架橋することを期待して、側鎖にチオエステル部位を有する曲面化合物の合成を試みた。 まず、様々な置換基が導入可能な水酸基を4つ有する曲面化合物を合成した。曲面化合物にはホストとなるsyn体の他、anti体が同時に生成するが、水酸基を有する曲面化合物は水溶性が高く、クロマトグラフィーなどの分離法が利用できなかった。そのため、一度水酸基をアルキル化した後に、クロマトグラフィーを用いて異性体の分離を行った。この合成法により、側鎖に4つのチオエステル部位を有する曲面化合物を得た。次に、エステル部位を脱保護しジスルフィド結合を形成を試みた。しかしジスルフィド結合形成により生じたポリマーと考えられる難溶性の沈殿が生じ、目的物を得ることができなかった。分子な内に4つのチオエステル部位を有することで反応が複雑になったと考え、側鎖の数を制御する合成を試みたが、目的物の収率が低いため、現在十分な検討を行えていない。
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