研究課題
基盤研究(C)
リン原子を2つ有する屈曲型分子は2つのリン原子の立体により、syn体とanti体が存在する。syn体の蛍光はanti体に比べて50 nm長波長に観測された。また、syn体はanti体に比べて高い蛍光量子収率を示し、anti体は三重項への項間交差効率が高い。このような蛍光特性の違いは、これらの化合物のLUMOがベンゼンのπ*軌道とP=O結合のσ*軌道からなるσ-π共役をもった軌道であり、励起状態ではσ-π共役をより効果的にしようとして屈曲型分子の構造緩和が起こるためと考えられる。
有機化学
リン原子をπ共役系に組み込むことで様々な発光有機材料が開発されてきた。その多くは、リン原子とπ共役系とが効果的に共役するためか、剛直な構造を持ったものであった。本研究で用いた屈曲型分子は適度な柔軟性を有するため、光励起により構造変化を起こし、それが蛍光特性の変化として観測された。このような分子は、様々な外部の刺激に応答して蛍光変化を示すセンサーとしての応用が期待される。