研究課題
本研究では,ベンズイミダゾリン(BIH)に光捕集部位として縮合芳香環(Ar)を置換したBIH-Arおよびヒドロキシアリール基を置換したBIH-ArOHの特異な酸化反応性を生かしたメタルフリー還元法の新展開を目指して,可視光で駆動する新規光試薬および光触媒の開発研究を実施している。本年度は,前年度課題の継続発展と新規課題に取り組み以下の成果を得た。まず,光活性化ナフトール置換BIH(BIH-NapOH)による種々のスルホンアミドの脱スルホニル化を達成した。光誘起によるBIH部位からNapOH部位へのプロトン移動(光誘起分子内プロトン移動)を経て生じるナフトキシド励起状態による基質還元の新機構を提出した。また,BIH-Arによるブロモカルボニル化合物の還元において,空気下光照射なしでα-酸素化が進行することを見出した。一方,より低反応性のα-スルホニル置換カルボニル化合物が基質の場合は,光活性化BIH-NapOHによりα-酸素化が可能であることを明らかにした。前年度に見出したBIH-NapOHの酸化体(BI+-NapO-)ベタイン光触媒と種々のヒドリド還元剤(水素化ホウ素ナトリウム,ピコリンボラン)が協働する新規光触媒法の適用基質の拡張を達成した。加えて,新たなベタイン光触媒としてフェノキシド置換体(BI+-PhO-)とナフトキシド置換ベンゾチアゾリウム(BT+-NapO-)を合成してその触媒活性度をBI+-NapO-と比較評価した。さらに,アミノアレーン置換ベンズイミダゾリン(BIH-ArNR2)の光還元試薬としての性能と酸化体(BI+-ArNR2)の光触媒能の調査を開始した。今後は,上記3タイプの還元酸化(レドックス)対(BIH-ArとBI+-Ar,BIH-ArOHとBI+-ArO-,BIH-ArNR2とBI+-ArNR)を用いる電子移動反応系の構築を推進して行く。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
The Journal of Organic Chemistry
巻: 83 ページ: 10813-10825
10.1021/acs.joc.8b01536