研究課題/領域番号 |
16K05690
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岩本 啓 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80304393)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カテナン / ライブラリー / フルオラスタグ / オレフィンメタセシス |
研究実績の概要 |
カテナンの窒素原子にフルオラスタグを導入するための条件検討を行った。窒素原子はアンモニウム塩となっており、クラウンエーテルとの水素結合により動的保護されていて、非常に反応性に乏しい。種々条件を検討したところ、スルホニル基を良好な収率で導入できることが明らかとなった。 スルホニル基の導入により、カテナンを構成する環状分子同士の回転運動が妨げられ、トポロジカル異性体が発現することが明らかになった。[3]カテナンでは、対称性の高いD2h対称をもつ異性体と、対称性の低いC2v対称性を持つ異性体が存在することを、NMR測定により明らかにした。導入したスルホニル基が大きさの小さいメシル基の場合、D2h対称をもつ異性体とC2v対称性を持つ異性体の間に平衡が存在し、対称性の高いD2h対称をもつ異性体のほうが安定であった。両異性体の安定性は溶媒により変化し、極性溶媒より非極性溶媒で、対称性の高いD2h対称をもつ異性体の安定性が増加した。この傾向は環サイズの異なる[3]カテナンでも観測された。D2h対称をもつ異性体は良好な単結晶が得られ、X線結晶構造解析により、分子内で環状分子同士が水素結合しており、この水素結合の効果が、D2h対称をもつ異性体の安定性に寄与していることが判明した。大きさの大きいトシル基を導入した場合、D2h対称をもつ異性体とC2v対称性を持つ異性体の間に平衡は無く、両異性体が安定に単離できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応性に乏しいカテナンの窒素原子に、スルホニル基を良好な収率で導入できる条件を見出したことから、フルオラスタグを窒素原子上に導入することが可能となった。しかし、スルホニル基を導入することでトポロジカル異性体が生じるため、ライブラリー化において、分離・精製がさらに困難になることが予想された。
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今後の研究の推進方策 |
フルオラスタグ化されたクラウンエーテルを用いたオレフィンメタセシス反応、末端アルキンのカップリング反応、およびアルキンとアジドのHusigen反応を用いてカテナン合成を検討する。カテナンの窒素原子に、スルホニル基を介してフルオラスタグを導入する。フルオラスタグ化されたカテナンはフルオラスシリカゲルを用いて分離、精製を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)旅費、および謝金で予定した支出がなかったため、未消化の予算が発生した。 (使用計画))研究遂行に必要な試薬・ガラス器具の費用は、今後増加すると予想される。よって、消耗品の購入に当てる予定である。
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