研究課題/領域番号 |
16K05694
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 智也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10378804)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 有機合成化学 / 有機金属化学 |
研究実績の概要 |
「各種求核剤との反応による含窒素複素環化合物の直截的合成」 2-シロキシフランとの反応: 芳香族化合物の開環反応を利用して1,3-ジエンなどの反応性官能基を合成することができれば、炭素ユニットの新たな導入手法をとして有用である。例えば、米国Vanderwalらは、ピリジニウム塩の開環反応(Zincke反応)を利用して、わずか六工程でStrychnineの全合成を達成している。我々は最近、求核剤として芳香族化合物である2-シロキシフランを用いたところ、開環反応が進行して立体選択的に不飽和イミンが得られることを見いだした。また反応条件を適切に選択することで、ジヒドロピリジンも選択的に得られることを明らかにした。また、本研究では、反応機構の詳細を明らかにしつつ、基質一般性について検討した。 最近、我々は上記の研究過程で、ベンゼン環のパラ位にビニル基が置換したトリアゾールを用いて反応を検討していたところ、予期に反しトリアゾールのみで反応して、光学的に純粋なシクロプロパン架橋パラシクロファンイミンが得られることを見いだした。この化合物は、C3対称性を持ち、[6]シクロパラフェニレンの類似構造体である。本研究ではこの類似性をより顕著にするために、まずイミンを加水分解して得られるアルデヒドを、ロジウム錯体を用いる脱カルボニル化反応によって、炭素と水素だけの化合物を合成した。また、芳香環上の同位体(重水素)で不斉誘起された「クリプトキラル化合物」の合成とVCD測定による物性評価を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の過程で見つかった、光学的に純粋なシクロプロパン架橋パラシクロファンイミンは、アリーレンと光学活性シクロプロパンを一つの構成単位に持ち、シクロプロパンの曲がった結合を介して剛直な「大環状“擬”共役系化合物」となっている。そのためアセチレンやフェニレンでつながった大環状共役系化合物と物性面での比較に興味が持たれるだけでなく、ユニークな構造に由来する新物質ならではの新発見につながると期待できるため。
|
今後の研究の推進方策 |
光学的に純粋なシクロプロパン架橋パラシクロファンイミンの研究をさらに続ける。例えば、ベンゼン環の置換様式をメタやオルトにかえたり、ベンゼン環をナフタレンやビフェニルにかえたりし、様々な構造を持つ環状[3]アリーレンシクロプロパンの合成を計画している。予備実験としてベンゼン環の置換様式をメタにかえた基質を用いて環状[3]メタフェニレンシクロプロパンの合成を試みたところ、考えられる4種類の回転異性体の内の一つcrown型だけが生成した。ついで高温条件下に付したところ、全てのメタフェニレンが反転したzigzag型との2種類の混合物になった。そこで合成した光学活性大環状化合物は、UV測定など一般的な物性評価に留まらず、アリーレン環の回転運動についてもVT NMRを用いて詳細を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、当初計画していたよりも、研究が進捗した。そのため、うまくいかなかった時に考えていた、不斉配位子などを新たに購入する必要がなかった。また、研究の過程で、我々の方法を用いると、これまで合成できなかった光学活性大環状化合物が合成できることを見出した。そこで次年度は、基質適応範囲の拡大を目指して研究する学生の人数を増やし、反応条件を詰め、様々な光学活性大環状化合物を合成していく計画である。これらの理由により、次年度使用する額が生じました。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記に述べた研究を行うのに必要な、反応剤や試薬の購入、汎用有機溶媒、反応容器やピペット、サンプル瓶などのガラス器具といった消耗品の費用に使用する計画である。
|