研究課題/領域番号 |
16K05695
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
光藤 耕一 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (40379714)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機電解合成 / 有機電気化学 / 電解酸化 / 環化反応 |
研究実績の概要 |
一年目に発見したアルキニルボロン酸を用いるクロスカップリング反応によるジイン合成の系について、カップリングパートナーとして様々なアルキニル種を用いて種々精査したが、反応の選択性は良いものの、分解反応が併発し物質収支があがらず、収率の改善が困難であった。 そこで、もう一度、様々なカップリング反応を精査したところ、電気化学的なS-H/C-H結合切断型の分子内クロスカップリング反応を見いだすことに成功した。本反応には臭化テトラブチルアンモニウムの添加が必須であり、臭化テトラブチルアンモニウムを添加しないと目的とする反応はほとんど進行せず、ジスルフィドを選択的に与える。また、支持電解質の選択も非常に重要で過塩素酸リチウムを用いることが必須である。反応の詳細を調べるために種々の参照実験を行ったところ、(i)電気を流さないと反応は進行しないこと、(ii) 化学的な臭素化剤では基質のブロモ化が併発するため目的とする反応の収率が劇的に低下すること、(iii)まずチオールがジスルフィドへと変換され、その後に炭素ー硫黄結合が形成されていることが明らかとなった。また、ジスルフィドから反応を始めても問題無くカップリング反応は進行する。 従来の化学的な手法では困難な分子変換反応であり、有機電解反応の特徴を活かした分子変換反応である。現在基質適用範囲について確認中であるが、現在あきらかとなっている範囲では基質適用範囲の一般性は極めて広く、多様な誘導体を高収率でえることに成功している。本反応は合成化学的に極めて有用な反応であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに電気化学的なC-H/S-H結合切断を経る新規分子内縮環反応を開発することに成功した。本反応は、電気を用いない化学的な変換反応に比べて極めて効率よく進行し、基質適用範囲も広い。本研究で期待した電気化学的な手法による効率的な分子変換反応であり、今後更なる展開が期待される。よって、研究の進捗状況としては、おおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
炭素ー水素結合、硫黄ー水素結合の切断を経る新たな形式の反応に成功したので、本反応の適用範囲について精査する。炭素ー硫黄結合形成の基質適用範囲を明らかにすると共に、炭素と硫黄以外のヘテロ原子とが同様に結合を形成できないかを明らかとしたい。また、本反応の進行においては電気化学的に発生させたハロニウム種が鍵となっている。電解発生させたハロニウム種を活用した分子変換反応はまだまだあると考えられる。本系を発展させ、より高度な分子変換反応へと展開していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は反応基質を固定した条件検討も多かったため、想定していたほど物品費がかからず、旅費が想定よりもかかってしまったものの、総額としては想定を下回り、その分次年度使用額が発生した。最終年度は基質適用範囲を明らかとすべく、さまざまな基質を合成・反応させる必要があるので、使用額は主に物品費に使用する。
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備考 |
社会により広く発信するため、研究室のウェブサイトはWordpressで作成しており、研究成果は逐次アップロードしている。毎日150-300PV程閲覧されている。今後内容をより充実させ、社会に研究成果を発信したい。
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