研究課題/領域番号 |
16K05704
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
福澤 信一 中央大学, 理工学部, 教授 (50173331)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アゾメチンイリド / オキサゾリン / チアゾリン / ニトロアルケン / 不斉共役付加 / 四級アミノ酸 |
研究実績の概要 |
オキサゾリンおよびチアゾリンエステルを環状アゾメチンイリド前駆体として用いて,置換ニトロアルケンとの反応を研究した。まず,オキサゾリンと置換にトロアルケンとの反応を,酢酸銅ととキラルオキサゾリン配位子のフェロセン誘導体(FcPHOX)の錯体を触媒として用いると,共役付加反応が進行し,二つのジアステレオマーが生成した。一方はニトロアルケンの置換基とオキサゾリンの窒素の立体化学がsynであり,もう一方は,antiの生成物が生成していることをNMRで確認した。配位子を種々検討し,不斉反反応の立体選択性の最適化を行った。電子的に中性及び電子豊富なFcPHOX配位子基のときは,生成物の立体化学はsynの生成物が主として生成し,エナンチオマー過剰率は 88% eeー93% eeであった。3,5-ジトリフルオロメチルホスフィンが置換した電子不足ののFcPHOXを用いると,生成物の立体化学は反転し,90% drの選択性でanti体が,97% eeの非常に高い値エナンチオマー過剰率で主生成物として得られた。チアゾリンエステルと置換ニトロアルケンとの反応も,同様に反応が進行し,電子豊富なFcPHOXではsyn体が,電子不足FcPHOXではantiが生成する立体選択性が観察された。この反応は,様々な置換基をもつオキサゾリンエステルおよびチアゾリンエステルに適用可能であり,多様な化合物の合成が可能であるだけでなく,立体異性体の作り分けも可能であり,立体的に多様な化合物の合成も可能である。 オキサゾリンエステルとニトロアルケンとの付加物を,Raneyニッケルを用いて還元を行うと,ニトロ基がアミノ基へと還元され,分子内のエステルとの交換反応をへて,スピロラクタムが生成した。この化合物は,非天然型の四級アミノ酸であり,生物活性が期待されるので,今後,付加物の変換反応に関しても研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピロリンエステルとニトロアルケンとの反応を,先行研究として行ってきており,本研究では,ピロリンエステルのオキサゾリンやチアゾリンエステルへの拡張を目指した。当初,オキサゾリンやチアゾリンの酸素およびイオウ原子の反応への関与を懸念していたが,ピロリンエステル同様に反応が高立体選択的に進行した。しかも,用いるホスフィン配位子の電子的性質に応じて,生成物の立体化学を制御できることが判明した。この結果は,立体多様性合成が可能であることを示し,多くの誘導体の合成が可能なので,創薬研究分野に貢献できると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究で,オキサゾリンエステルとニトロアルケンとの不斉共役付加反応が,高立体選択的かつ立体多様的に進行し,多様な生成物が得ることが可能であることを示せた。生成物をRaneyニッケルで還元をすると,スピロラクタムが得られ,これは非天然型の四級アミノ酸である。この化合物は,生物活性を示すことが期待できるので,生成物の化学変換に関しても研究を行う。すなわち,オキサゾリン環やチアゾリン環の加水分解をへて,四級不斉炭素をもつセリンやシステインの誘導体の合成を行う。 今後の計画として,生物活性分子,医薬品中間体などの付加価値の高い化合物の合成反応を目指して生物活性分子の合成を目指して,環状および鎖状アゾメチンイリドと活性アルケンとの反応設計を行う。まず,ニトロイソオキサゾール化合物を活性アルケンとして用いて,ピロリンエステルやオキサゾリンエステルなどの環状アゾメチンイリドとの不斉環化付加または共役付加反応を研究する。イソオキサゾールの結合したピロリジン誘導体は,例えばエピボキシジンのような生物活性を有する興味ある化合物である。次に,チオフェンジオキシドを活性アルケンとして用いる環状アゾメチンイリドとの環化付加反応を研究する。硫黄原子と窒素原子の両方を含む縮環化合物も,生物活性が期待されている。このような化合物の簡便な合成法として,この反応を提案する。一般にピロリジンは脂溶性であり,医薬品として用いる場合,水溶性の方が望ましい。ピロリジンの脂溶性の欠点を補うために,チオフェンジオキシドのような極性置換基は有効であり,しかも,二つのヘテロ環が存在することから特異的な生物活性が期待できる。 以上のように,生物活性分子の多様性合成を目指し,創薬研究分野への波及効果をねらう。
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次年度使用額が生じた理由 |
光学異性体分離用のHPLCカラムの購入を予定していたが,研究期間中に分析対象の化合物に適したカラムが見つからず,購入を見送った。HPLC販売業者(ダイセル)に依頼分析をして,本年度新たに発売されるカラムを含めて,分離可能なカラムを見つける,または分析対象物の置換基を変えるなどして,分離可能はカラムを見つける。 11族化合物として,高価な金錯体の検討も予定していたが,安価な銀と銅化合物で良好な結果が得られたので,購入をしなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
分析対象物に最適な光学異性体分離用のHPLCカラムが見つかったらの購入を行う予定である。また,金錯体も触媒として検討したいので,銀や銅化合物に加えて,金化合物の購入を行う予定である。 上記以外に,破損したシュレンク管などのガラス器具の補充に費用を割り当てる予定である。
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