研究課題/領域番号 |
16K05708
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
村田 剛志 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (40535358)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機中性ラジカル / 縮合多環構造 / キラリティー / 有機導電体 / 混合原子価塩 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、TOTの炭素骨格の3つの頂点部に不斉炭素原子を持つ新規TOT誘導体の合成を行った。キラルなオキサゾリン環導入体については、H28年度に合成手法を確立したアミド基導入体の合成手法をもとに、環形成を行うことで効率的に合成することに成功した。キラルなアミノ基を持つ誘導体については、対応するアミンとの遷移金属触媒を用いたクロスカップリング反応により合成できた。これらの誘導体は大気下、室温でも高い安定な中性ラジカル種を与え、塩化メチレンやTHFなどの数種類の有機溶媒に対して溶解性を示した。ESRスペクトルでは、置換基の運動性のために電子構造を調べるのに十分な高分解能なデータは得られていないものの、量子化学計算からは電子スピンの置換基への染み出しが示唆されている。UV-vis-NIRスペクトルでは、アミノ基導入体がTOTの中性ラジカル種のπ積層体に特徴的な近赤外光吸収を示したのに対し、オキサゾリン環を持つものではそれが観測されず、固体中でこれまでのものとは異なる集積構造を構築していることが示唆された。電気化学測定では、これらの誘導体はいずれもTOTに特徴的な、中性ラジカルからラジカルテトラアニオンに至る4段階の酸化還元能を示し、置換基の電子供与性により酸化還元波が低電位側にシフトする様子が観察された。 また、平成28年度に合成した光学活性なアミド基を持つ誘導体について、モノアニオン種の単結晶X線構造解析に成功し、この塩がキラルな空間群を持ち、アニオン種であっても中性ラジカルのようなπ積層構造を構築できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した分子の合成を達成し、その基礎的な物性から置換基の電子的な効果を明らかにした。 また電解酸化法により、X線結晶構造解析には至らないものの、混合原子価塩の作製に成功しており、高導電性の発現が期待できる成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
H28、H29年度に合成した光学活性な置換基を持つTOT誘導体について、高導電性の混合原子価塩の作製を各種検討する。 混合原子価塩の中から、特に高導電性でキラリティーを有する塩をピックアップし、複合機能の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
出張旅費に関しては、共同研究先での実験を予定していたが、それを実施する段階にいかなかった。 また、その他には依頼分析費を計上していたが、共同研究先で行ったため、経費がかからなかった。 混合原子価塩の単結晶試料の作製と結晶構造解析および導電物性の解明が目下の課題であり、その実験のための物品に集中させて使っていく予定である。
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