研究実績の概要 |
筆者らは,以前に超原子価ヨウ素試薬による酸化的N-H/C-H カップリング反応による縮環型化合物の合成に成功している(Synthesis 2011, 3235).これをダブル環化反応に展開することにより,6-5-6-6-6-5-6 型縮環を持つ7環式アザヘリセンを市販品からわずか2工程で合成する方法を見出した.即ち,市販品である2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンにアニリンを反応させ2,9-ビス(フェニルアミノ)-1,10-フェナントロリンとした後、mCPBA と4-メトキシヨードベンゼンから系中で発生させた超原子価ヨウ素試薬を作用することにより,脱水素型のN-H/C-Hカップリング反応が進行し,ほぼ定量的にテトラアザヘリセンを合成することに成功した.本合成法は類縁体合成にも応用可能であり,アニリンをp-トルイジン,p-アニシジン,2-ピリジルアミン,あるいは1-ナフチルアミンに換えて同様の合成を行い,メチル基はメトキシ基が導入されたヘリセンや,骨格を構成する環が異なるヘリセンの合成にも成功した. ヘリセンは一般的に発光特性が低いが,本ヘリセンはジクロロメタン溶液中、ヘリセン類としては最高水準の蛍光量子収率38%で発光する.さらに興味深いことにトリフルオロ酢酸を添加すると量子収率が80%にまで向上することも見出した. 光学分割より両エナンチオマーを単離することができ,それらが優れた円偏光発光特性を示すことも明らかにした. これらの研究成果は,誌上に発表した(Angewandte Chemie International Edition, 2017, 56, 3906ー3910).
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