• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

優れた蛍光特性を有するヘテロヘリセンの効率的合成法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K05710
研究機関阿南工業高等専門学校

研究代表者

大谷 卓  阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 講師 (70339109)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアザヘリセン / 簡便合成法 / 超原子価ヨウ素
研究実績の概要

筆者らは,独自に開発した超原子価ヨウ素試薬による酸化的N-H/C-H カップリング反応をダブル環化反応に展開することにより,6-5-6-6-6-5-6 型縮環を持つ7環式アザヘリセンを市販品からわずか2工程で合成する方法を昨年度開発した.即ち,市販品である2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンにアニリンを反応させ2,9-ビス(フェニルアミノ)-1,10-フェナントロリンとした後、mCPBA と4-メトキシヨードベンゼンから系中で発生させた超原子価ヨウ素試薬を作用することにより,脱水素型のN-H/C-Hカップリング反応が進行し,ほぼ定量的にテトラアザヘリセンを合成できる.また本合成法は対称なヘリセン類縁体合成にも応用可能である.ヘリセンは一般的に発光特性が低いが,本手法で合成されるヘリセンはジクロロメタン溶液中高い蛍光発光特性を示す特徴がある.(無置換体:蛍光量子収率38%).筆者らは,2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンに順次アニリン誘導体を反応させることにより非対称の 2,9-ビス(アリールアミノ)-1,10-フェナントロリンを合成する方法を開発し,それに超原子価ヨウ素試薬を作用し,2度の脱水素環化反応を連続的に行うことにより,非対称のヘリセン誘導体を合成することに成功した.骨格の末端に電子供与基と電子求引基を一つずつ導入すると,2つの電子供与基あるいは電子求引基を持つヘリセンよりも量子収率が高くなる傾向があることが示唆された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

筆者らは,以前に開発した超原子価ヨウ素試薬による酸化的N-H/C-H カップリング反応による縮環型化合物の合成法をダブル環化反応に展開することにより,6-5-6-6-6-5-6 型縮環を持つ7環式アザヘリセンを市販品からわずか2工程で合成することに成功した.即ち,市販品である2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンにアニリンを反応させ2,9-ビス(フェニルアミノ)-1,10-フェナントロリンとした後、mCPBA と4-メトキシヨードベンゼンから系中で発生させた超原子価ヨウ素試薬を作用することにより,ほぼ定量的にテトラアザヘリセンを合成することに成功した.本合成法は類縁体合成にも応用可能であり,アニリンをp-トルイジン,p-アニシジン,2-ピリジルアミン,あるいは1-ナフチルアミンに換えて同様の合成を行い,メチル基やメトキシ基が導入されたヘリセンや,骨格を構成する環が異なるヘリセンの合成にも成功した.本ヘリセンはジクロロメタン溶液中、ヘリセン類としては最高水準の蛍光量子収率38%で発光する.光学分割より両エナンチオマーを単離することができ,それらが優れた円偏光発光特性を示すことも明らかにした(Angewandte Chemie International Edition, 2017, 56, 3906ー3910).
2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンに順次アニリン誘導体を反応させることにより非対称の 2,9-ビス(アリールアミノ)-1,10-フェナントロリンを合成する方法を開発し,それに超原子価ヨウ素試薬を作用し,2度の脱水素環化反応を連続的に行うことにより,非対称のヘリセン誘導体を合成することに成功した.骨格の末端に電子供与基と電子求引基を導入すると量子収率が高くなる傾向があることが示唆された.

今後の研究の推進方策

高い量子収率と優れた円偏光発光特性を持ち合わせたヘリセンの合成について多くの研究がなされているが,どのような分子デザインをすれば高い量子収率を示すのかについては,非常に重要な問題ではあるが明らかにはなっていない.
筆者らは,2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリンに順次アニリン誘導体を反応させることにより非対称の 2,9-ビス(アリールアミノ)-1,10-フェナントロリンを合成する方法を開発し,それに超原子価ヨウ素試薬を作用し,2度の脱水素環化反応を連続的に行うことにより,非対称のヘリセン誘導体を合成することに成功した.骨格の末端に電子供与基と電子求引基を導入すると量子収率が高くなる傾向があることが示唆された.この知見を基に,ヘリセン骨格に種々の置換基を導入し,それらがヘリセンの量子収率にどのような影響を与えるのかを明らかにしていきたい.

次年度使用額が生じた理由

年度末に海外での国際学会の発表を行い,旅費の確定が遅れたため15,578円の繰り越し金が生じた.この金額は30年度の物品費として主に試薬やガラス器具などの消耗品代に費やす予定である.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (3件)

  • [学会発表] Two-Step Synthesis of 1,10-Phenanthroline-Derived Polyaza-[7]helicenes2018

    • 著者名/発表者名
      Takashi Otani
    • 学会等名
      International Congress on Pure & Applied Chemistry (ICPAC) 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] p-フェニレンジアミンを出発物質としたポリアザ[7]ならびに[9]ヘリセンの簡便合成と評価2018

    • 著者名/発表者名
      岩清水千咲・馬場拓充・大谷卓・カニヴァステイヴィンキャロ・柴田高範
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会2018
  • [学会発表] Facile two-step synthesis of highly fluorescent polyaza[7]helicenes2017

    • 著者名/発表者名
      Takashi Otani
    • 学会等名
      26th International Society of Heterocyclic Chemistry (ISHC) Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] 2 段階合成法によるらせん不斉を有するポリアザ[7]ヘリセンの合成と光物性評価2017

    • 著者名/発表者名
      大谷 卓・露木亜美・岩地大輝・染谷 聡・舘野航太郎・ 河合英敏 ・齊藤隆夫 ・カニヴァ ステイヴィン キャロ ・柴田高範
    • 学会等名
      第47回複素環化学討論会
  • [備考] 高い発光性を示すヘリセンの迅速的合成

    • URL

      https://www.chem-station.com/blog/2017/09/azahelicenes.html

  • [備考] 本校教員らの研究成果がドイツ化学会誌に掲載

    • URL

      http://www.anan-nct.ac.jp/notifications/1990/

  • [備考] 市販品試薬からわずか2工程、らせん状低分子有機化合物の合成法を開発

    • URL

      https://www.waseda.jp/top/news/52473

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi