2)CCOMプログラムを用いた3Dフラグメントデータベースの構築 昨年度開発した密度汎関数法(DFT)計算のための初期構造を自動生成するRingFragGenerationプログラムを用いて、1万を超えるキラル有機分子の立体配座解析を行った。実測の赤外円二色性(VCD)スペクトルを再現できた立体配座構造の中から、DFT振動数計算で得られたギブズ自由エネルギー値がおよそ1 kcal/molの範囲に収まる877個の安定な有機3Dフラグメントをデータベースに収集した。これにより、分子量300程度の有機分子であれば最大共通部分構造(MCS)を選択して初期構造を自動生成できることがわかった。さらに、プログラムの検証のためエリスロマイシン、エベロリムス、テムシロリムス、ブリオスタチン1のマクロライド分子の立体配座探索を行った。 昨年度報告したラパマイシン分子のオキサリル基の新規水素結合様式について、これまでの核磁気共鳴(NMR)を用いた溶液の解析ではX線結晶構造とよく似た構造をとると帰属されていることから議論になり、NMR解析との比較を含めた詳細な解析を再度行った。実測のVCDスペクトルから重クロロホルム溶液と重ジメチルスルホキシド溶液では明らかに構造に違いがみられ、重クロロホルム溶液では分子内水素結合により構造変化が起こり、オキサリル基の新規水素結合様式をとることが検証できた。さらに、NMRのDFT計算を行い、majorな異性体についてオキサリル基の新規水素結合様式をもつ立体配座とよい一致を示すことを確認した。また、立体配座コード文字列を出力するConfCodeView3プログラムを改良し、X線結晶構造データと比較するためcifファイルにも対応できるようにし、本解析に用いた。
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