研究課題/領域番号 |
16K05712
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
土井 貴弘 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20359483)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メリライト / 複合アニオン化合物 / 低次元磁性 / 磁気秩序 / 磁気フラストレーション / 第一原理バンド計算 / トポタクティック反応 / マルチフェロイック |
研究実績の概要 |
本研究課題では新規メリライト型化合物の合成と物性制御を目指して、その化学組成に対して従来のカチオン置換に加えてアニオンサイトの置換を行うことで新物質探索を継続的に試みている。さらに、メリライトの特徴のひとつである低次元構造に着目して物性研究を行うとともに、新たな低次元磁性を示す物質の探索や遷移金属のスピン挙動の系統的理解を目指して、関連構造を持つ化合物系へ研究を展開している。2年目の主な研究成果として、以下の実績を上げた: 【マンガンを含むメリライト型化合物の酸素不定比性と物性】マンガンを含むメリライト型化合物Sr2MnGe2O7は、以前に我々のグループによって物性の報告(Inorg. Chem., 51, 3572-3578 (2012))した化合物であるが、その際に、酸素量の異なる組成の合成が可能であることを示していた。この物質のアニオンサイトが物性に与える影響を明らかにするために詳細に研究を行い、その結果、Sr2MnGe2O7+dと表せる不定比性を持ち、その不定比量d、さらにはXANESによるMn酸化数、中性子回折による構造解析、磁気的性質を明らかにすることに成功した。 【二次元三角格子化合物Ba2La2MW2O12の磁性】メリライトとタイプの異なる二次元格子を持つBa2La2MW2O12(M: 遷移金属)が従来の報告と異なる結晶構造を持つこと、さらにMサイトの遷移金属の違いにより磁性が大きく変化する(反強磁性・強磁性)こと明らかにし、第一原理バンド計算によりその原因を明らかにした。 【フルオライト派生構造を持つ化合物の合成と磁性】Mサイトが一次元的な配列を持つLn3MO7(Ln: ランタノイド; M: 遷移金属等)型化合物の構造・磁性を解明するため、新規合成を行い、固体酸化物中では不安定なCe3+を含むCe3MO7(M = Nb, Ta)を得る事に成功し、その構造と磁性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メリライト型化合物に関して、アニオン置換だけでなく酸素不定比性を利用して合成研究を展開し、それらに対して放射光を用いたXANES測定など様々な実験手法や計算的手法を用いることで、磁気的性質だけでなくその電子状態を含めた物性の理解の段階へ進んでおり、研究をさらに進展させることに成功している。さらに、メリライトと関連する種々の低次元構造を持つ派生物質の研究により新たな発見や成果を得ることにも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
メリライト型化合物をはじめとした新物質の合成研究を継続的に行う。合成にあたってはその主眼をアニオンサイトに置き、酸素不定比性の制御、ハロゲンの導入(F、Cl)に加えて、準安定な化合物の合成のためにトポタクティック反応を利用した酸化・還元手法など様々な合成手法を試みる。 得られた試料に対しては、磁性(磁化率、磁化、比熱等)を中心とした物性研究を進めるが、その理解のためにも結晶構造(XRD、中性子回折、放射光XRD、メスバウア分光、ラマン分光)や、バンド構造(電気伝導性、拡散反射スペクトル、DFT計算)に関する知見を得て多角的にメリライト化合物の物性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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