研究実績の概要 |
2017年度は擬一次元ハロゲン架橋金属錯体と呼ばれる物質系を中心にその熱電特性の評価を行った。擬一次元ハロゲン架橋金属錯体はNi, Pd, Ptを中心金属とした一次元電子系物質であるが、CoやCuなどをドープすることでその電子状態を連続的に制御できることが知られている。我々はNi錯体とPd錯体に対してCoをドープすることでどのように熱電特性が変化するかを調べた。本研究では[PdII(R,R-chxn)2][PdIV(R,R-chxn)2]Br2]Br4、および[NiIII(R,R-chxn)2Br]Br2 (R,R-chxn = 1R,2R-diaminocyclohexane)を対象とした。加えてここに異種金属として電子不足なコバルト三価をドーピングした[Ni1-xCox(chxn)2Br]Br2、[Pd1-xCox(chxn)2Br]Br2を合成し、xを変化させながらゼーベック係数Sの測定を行った。この測定により、n型半導体である[NiⅢ(R,R-chxn)2Br]Br2へのホールドーピングによるゼーベック係数Sの減少を確認できた(表1)。真性半導体である[Pd(R,R-chxn)2Br]Br2ついては抵抗が極めて高く、ホールドーピングによるゼーベック係数の変化を系統的に評価することは出来なかったが、パラジウムMX錯体へのコバルトドープの報告例はまだなされておらず、新規化合物である。
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