研究実績の概要 |
サステイナブル社会の実現には,枯渇資源利用からの脱却,すなわち再生可能エネルギー安定供給システムの創出が重要な課題である.再生可能エネルギーの創出はすでに様々な角度からプロジェクトが展開されており,太陽光発電(蓄電),燃料電池,熱電,バイオエタノールなどが挙げられる.その中で無尽蔵に降り注ぐエネルギー利用の観点から,申請者は太陽光利用に着目した研究を遂行している.これまでの研究では,分子や無機化合物はHOMO-LUMOやバンドギャップに相当する波長のエネルギーを吸収するため,紫外から可視光領域の光が利用されてきた.今回は,分子の相互作用を利用することで,吸収帯を近赤外領域まで拡張させ,透明な光電変換デバイスを作製することを考えた. 本研究では,界面分子エピタキシャルによる近赤外光電変換デバイスを構築するするために,π共役系が拡張したナフタロシアニン誘導体やナフタロシアニン誘導体を用いて,透明電極上に分子を固定化する実験を行った. 電極上での分子固定の確認は、原子間力顕微鏡、吸収スペクトル測定により行った.その結果,分子固定前後で表面モルフォロジーが大きく変化しており,また,分子に由来するQバンドが顕著に観測されたことから,ナフタロシアニン誘導体とナフタロシアニン誘導体を透明電極上に固定できていることが示唆された. なお,原子間力顕微鏡による表面観察では,凹凸は10ナノメートル程度であり,分子が集まってドメインを形成していることがわかった.吸収スペクトル測定では,分子を有機溶媒に溶解させて測定したスペクトルよりも電極上に固定したスペクトルの方が長波長側に大きくシフトしていることがわかった.これは分子と分子が電子的な相互作用をすることによるものと考えられる.
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