研究課題
ある種の有機金属ヒドリド錯体は可視光励起によって脱プロトン化して低原子価イリジウム錯体 がプロトン化と競争して過渡的(< 100 ms)に生成する。この低原子価金属錯体はプロトン還元により水素を放出するため短寿命であるが、これを制御して反応により金属多核化を行なった例は無いため、これまでその光化学過程においてその存在が見過ごされてきた。生ずる低原子価金属錯体やその類縁体の電気化学や時間分解分光観測により、金属錯体の光物性や光物理過程、化学反応過程の直接観測やそれらの時定数の決定に成功した。一方、金属錯体は、その結晶が様々な多形を示す場合があり、単結晶X線構造解析を行ない、その要因を明らかにした。単結晶X線構造解析には、発光性の分子結晶の構造解析を行うことで得たノウハウを活用した。これらの結果を用いることで、効率的な光触媒反応条件を、網羅的な条件探索だけに頼ることなく見出すことができると考えられる。また、共存する様々な助触媒の協同触媒作用を利用して、二酸化炭素、一酸化炭素などの小分子の高効率多電子還元を実現することも可能である。この場合、ギ酸、ホルムアルデヒド、メタノール等のC1化合物として選択的に液化固定し、温室効果ガスを削減して地球温暖化の抑制に寄与することができる。
2: おおむね順調に進展している
有機金属ヒドリド錯体の合成やその分光観測手法開発などについては、順調に研究が進展している。特に、金属ーヒドリド結合の光開裂は、1光子励起状態から2電子還元状態への遷移を伴うので、その直接観測が必要であるが、サブns過渡吸収分光観測によって、その機構の一端が解明されつつあることは成果として特筆すべき点である。
大阪府北部地震の影響で1年の研究期間延長を認められたので、当初の研究目的を大幅に変更することなく研究を進めることができるようになった。金属ヒドリド錯体を用いた光触媒反応開発やその反応機構解明を進める。研究成果の公表は海外で開催される国際会議において招待公演を行い、成果を取りまとめて国際論文誌への論文掲載を予定している。
理由:2018年6月の大阪府北部地震により甚大な被害を受け、研究に必要な機器が深刻なダメージを受け、その復旧に時間を要したため。使用計画:成果取りまとめに必要な実験に用いる試薬の合成やその分析を進め、研究成果を国内外の学会で発表するとともに、国際的論文誌において掲載発表する。そのための物品費や旅費として使用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 12件、 招待講演 1件) 産業財産権 (2件)
Journal of Photochemistry and Photobiology, A: Chemistry
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ソフトクリスタル News Letter
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