研究課題/領域番号 |
16K05722
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
半田 真 島根大学, 総合理工学研究科, 教授 (70208700)
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研究分担者 |
片岡 祐介 島根大学, 総合理工学研究科, 助教 (20725543)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ルテニウム / ランタン型二核錯体 / シアニド架橋ポリマー / 一次元ワイヤー構造 |
研究実績の概要 |
カルボン酸架橋ランタン型ルテニウム(II,III)二核錯体[Ru2(O2CR)4]+は、分子内のRu-Ru結合に基づき生じた分子軌道δ*とπ*が偶然に縮重しているために、3個の不対電子(S = 3/2)が存在している。しかも、この二核錯体は第二遷移金属のルテニウムイオンに由来して大きなゼロ磁場分裂(D = 60 cm-1)を有している。これまで、[Ru2(O2CR)4]+を基本ユニットと考え、これをヘキサシアニド鉄(III)酸イオン([Fe(CN)6]3-)(S = 1/2)やオクタシアニドタングステン(V)酸イオン([W(CN)8]3-)(S=1/2)で連結した3次元集積化合物が低温で磁性体となることが確認されているが、カルボン酸に導入した置換基(R)の嵩高さを利用して、得られる化合物の次元性を制御したり、架橋二座カルボン酸イオンそのものをアミジナート二座配位子などに変換した二核錯体で集積化合物の合成がなされた例はない。2017年度、3,4,5-エトキシ安息香酸イオン(3,4,5-(C2H5O)3C6H2COO-)を分子内架橋配位子とする二核錯体[Ru2{3,4,5-(C2H5O)3C6H2COOH}4]BF4に[Fe(CN)6]3-を反応させたところ、茶色粉末微結晶を得た。現在、単結晶の作成を試みていいる。さらに、[Ru2(O2CCH3)4]+に、[Rh(CN)6]3-および[Ru2(CN)6]2-を組み合わせた反応でも、集積型錯体が得られることを確認した。また、ホルムアミジナートイオンを分子内架橋配位子とするランタン型二核錯体[Ru2(dpf)4]BF4(dpf- = N,N’-ジフェニルホルムアミジナートイオン)と[Fe(CN)6]3-および[Fe(CN)6]3-の反応でも目的集積型錯体と思われる化合物の単離に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3,4,5-エトキシ安息香酸イオン (3,4,5-(C2H5O)3C6H2COO-)を分子内架橋配位子とする [Ru2{3,4,5-(C2H5O)3C6H2COO}4Cl]nとAgBF4との反応で [Ru2{3,4,5-(C2H5O)3C6H2COO}4]BF4を得ることができ、さらに [Fe(CN)6]3-を反応させることで、目的の化合物と思われる粉末を得たことから、合成手法の確立ができた。さらに、ホルムアミジナートイオンを分子内架橋配位子とするランタン型二核錯体[Ru2(dpf)4]BF4(dpf- = N,N’-ジフェニルホルムアミジナートイオン)と[Fe(CN)6]3-および[Fe(CN)6]3-の反応でも目的集積型錯体と思われる化合物の単離に成功した。また、ベンズアミデート(PhCON-)を分子内架橋配位子とするランタン型ルテニウム(II,III)二核錯体の合成にも成功した。以上、着々と課題研究は進んでおり、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
[Ru2{3,4,5-(C2H5O)3C6H2COO}4]+を[Fe(CN)6]3-で連結した集積化合物のIR、元素分析等により同定を行ったあと、目的の一次元鎖ワイヤー型構造をしているかを単結晶X線構造解析により確認する。確認できれば、磁化率の温度変化や磁場依存、FCMやZFCMの測定を行う。また、対照実験として、反磁性の[Rh2{3,4,5-(C2H5O)3C6H2COO}4]のランタン型二核錯体の合成も行い、ランタン型二核ユニットを介した[Fe(CN)6]3-の間の磁気的相互作用の大きさを見積もる。また、[Fe(CN)6]3-に加え、[W(CN)8]5-でも同様の実験を行い、シアニド錯イオンユニットの磁気的性質に及ぼす影響についても調べる。さらに、エトキシを有しない安息香酸イオンさらにはより嵩高いアルコキシをフェニル基に導入したカルボン酸イオンを分子内架橋とするランタン型ルテニウム二核錯体でも同様の実験を行うことで、一次元鎖間の違いが磁気的性質に及ぼす影響について調べる。また、ホルムアミジナートイオンを分子内架橋配位子とするランタン型二核錯体[Ru2(dpf)4]BF4(dpf- = N,N’-ジフェニルホルムアミジナートイオン)およびベンズアミデート(PhCONH-)を分子内架橋配位子とするランタン型二核錯体[Ru2(HNOCPh)4]BF4と[Fe(CN)6]3-との反応でも目的集積型錯体を合成し、分子内架橋配位子をカルボン酸イオンからアセトアミジナートイオンやホルムアミジナートイオンに変換し、架橋酸素原子が窒素に置き換わったことの影響も調べる。
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