研究実績の概要 |
カルボン酸架橋ランタン型ルテニウム(II,III)二核錯体[Ru2(O2CR)4]+は、分子内のRu-Ru結合に基づき生じた分子軌道δ*とπ*が偶然に縮重しており、3個の不対電子(S = 3/2)が存在している。Rに嵩高い置換基を導入し、[Fe(CN)6]3-(S = 1/2)や([W(CN)8]3-)(S=1/2)との集積型錯体を得るための組合せに於いて、CN基の配位を制御することで、一次元ワイヤー型磁性体を合成することを目指した。 3,4,5-エトキシ安息香酸イオン(3,4,5-(C2H5O)3C6H2CO2-)を分子内架橋配位子とする二核錯体[Ru2{3,4,5-(C2H5O)3C6H2CO2}4]BF4に[M(CN)6]3- (M = Fe(III), Cr(III))を反応させたところ、茶色粉末は生成するが、純粋な化合物として単離できなかった。嵩高さの導入は、CN基の均一な配位が困難にしたことによると考えられた。より嵩高さの少ないピバル酸イオン((CH3)3CO2-)を用いると、 集積型錯体[n-Bu4N][{Ru2(O2CC(CH3)3)4}2(H2O){W(CN)8}]が得られ、磁気転移がTc = 5.5 Kであることを確認した。N,N’-ジフェニルフォルムアミディネートイオン(dfp-)を用いると、集積型錯体[{Ru2(dpf)4}3{M(CN)6}] (M=Fe(III), Cr(III))が得られ、その室温での有効磁気モーメントは、5.20 μB (M = Fe(III))、4.82 μB (M=Cr(III))で、ルテニウム(II,III)二核のスピン状態がS=3/2からS=1/2と変化しており、磁性体としての挙動は観測されなかったが、架橋配位原子をO,OからN,Nの組合せに変えることで、集積体の二核ユニットのスピン状態を変化できることを確認した。
|