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2016 年度 実施状況報告書

金属表面と有機構造の協奏的設計による新触媒開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K05723
研究機関広島大学

研究代表者

久米 晶子  広島大学, 理学研究科, 准教授 (30431894)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード二酸化炭素還元 / 銅 / カソード触媒
研究実績の概要

陽極掃引で活性化したCuAAC反応を用いて、銅電極表面に中性およびカチオン部位を導入し、これらのCO2還元によるガス生成物(水素、一酸化炭素、メタン、エチレン)の定量分析とその印加電位依存性について調べた。中性分子を導入した電極では4割程度のエチレンおよびメタンの生成が観測され、長期の電解でも還元電流量が維持されるのに対し、未修飾の電極では10分の電解で半分程度に低下し、エチレンおよびメタンの生成は1割程度にとどまった。興味深いことに、還元開始時のボルタモグラムのプロファイルは未修飾および修飾した電極でほとんど同じであり、通常金属表面に有機化合物を修飾した際に見られる有効表面積の減少は観測されなかった。したがって、本方法での金属表面への有機物導入では、電気化学的には基質やイオンの接近が妨害されないが、活性点を失活過程から保護することができることが分かった。また、同様の方法でカチオン部位(4級アミン)を金属銅表面に導入すると、還元開始電位が約0.2V正側にシフトした。還元電流密度は3~4倍に増大するが、この電流の増加分はほぼ水素発生に消費されていることが分かった。金属銅表面上ではプロトン還元による水素の発生とCO2還元によるCO,炭化水素発生の二つの過程が並行する。表面へのカチオン導入によって金属上の還元過程の活性化エネルギーを変えることは可能であるが、この場合はプロトン還元の過程のみ過電圧が下がり、水素の生成量だけが増大するということが分かった。
これらの修飾電極について、XPSによる表面元素の分析を行ったところ、CuAAC反応は完全に進行しておらず、エチニル末端部位が残存していることが分かった。また、中性分子導入の場合には、電解の前後で膜構造が保たれているが、カチオン部位を導入した場合には、電解過程で表面の有機物が減少していることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

表面に導入する有機物を、カチオンに変化させると、金属表面での反応過程をエネルギー的に変化させることができることを明らかにした。しかし、中性分子の部分にピリジンや3級アミンなどのプロトン移動に関わる置換基を導入してもあまり、生成物の分布に変化は見られなかった。また、これらの中性分子を導入した場合には、未修飾の銅電極に比べて触媒耐久性が改善されるが、還元電流の電位プロファイルなどにほとんど変化がない。疎水性の炭化水素が金属銅表面に導入されていることが、耐久性の変化に最も大きな変化を及ぼしていると考えられ、それ以上の分子構造を反応に介入させ、還元反応に対する影響を明らかにするには、銅表面とこれらの部位をより決まった構造で近接させる必要があると考えている。

今後の研究の推進方策

一つ目の手がかりとして、カチオンの導入によって、水素発生過程の過電圧が正側にシフトすることを応用する。逆に銅表面にアニオン部位を導入するなど、電子密度が上がる修飾方法を検討することで水素発生過程を負側にシフトし、二酸化炭素還元のファラデー効率を改善するという手立てが考えられる。
二つ目には、中性分子を用いた場合に有機物部分の分子構造特性があまり反映されないことが問題となっている。グラフェンと金属粒子のコンポジットによる材料がごく最近になって多数報告されていることも考えると、現在用いている構造中で金属表面に最も近接しているのは芳香族部分あるいは二酸化炭素還元中に炭素結合が伸びることで生じたグラフェンの部分構造ではないかと推測している。このことにつき、XPSによる解析を精密化することで、表面上の炭素、窒素原子の状態に関する実験的根拠に基づいて、表面種の化学状態を明らかにする。また、分子構造を多環式芳香族へと拡張することで、金属と接する部分を特定化し、ここに置換基を導入することで二酸化炭素還元に対する化学構造の影響を大きくすることを試みる。

次年度使用額が生じた理由

ガスクロマトグラフィー校正用のキャリブレーションガス及び圧力調整器をガス会社に発注し、納期が3か月かかっているため年度をまたいだ。

次年度使用額の使用計画

主にガスクロマトグラフィー校正用のキャリブレーションガスに使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Selection of two optional covalent bonds by electric stimuli: dual catalytic switching of redox-active copper2016

    • 著者名/発表者名
      Yu Kamamoto, Yuya Nitta, Kazuyuki Kubo, Tsutomu Mizuta, Shoko Kume
    • 雑誌名

      Chem. Commun.

      巻: 52 ページ: 10486-10489

    • DOI

      10.1039/C6CC03407A

    • 査読あり
  • [学会発表] CO2 Reduction on Metallic Copper Cathode Modified by On-Surface Organic Networking2017

    • 著者名/発表者名
      Shoko Kume
    • 学会等名
      日本化学会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2017-03-19
  • [学会発表] Cathodic Reduction of Carbon Dioxide on Cu Metal/Organic Hybrid Prepared with On-Surface Organic Framing Method2016

    • 著者名/発表者名
      Shoko Kume
    • 学会等名
      錯体化学会第66回討論会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      2016-09-11
  • [学会発表] On-metal Framing of Organic-contact Cathode with High Proton Reduction Activity2016

    • 著者名/発表者名
      Shoko Kume
    • 学会等名
      2016 Collaborative Conference on 3D and Materials Research
    • 発表場所
      Incheon、Korea
    • 年月日
      2016-06-19
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 触媒技術の動向と展望2017 [3-8] キャラクタリゼーション分野 触媒活性の電極反応による制御と反応場の構築2017

    • 著者名/発表者名
      久米 晶子 (分担執筆)
    • 総ページ数
      593
    • 出版者
      触媒学会

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公開日: 2018-01-16  

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