研究実績の概要 |
ある種銅錯体はメタンを酸化し、メタノールを生成することが知られている。特に生体内のメタン酸化酵素(pMMO)やゼオライト触媒中ではその銅活性点の役割と機構に興味がもたれている。そこで本研究ではゼオライト中の銅錯体によるメタン酸化機構とその活性種生成機構について理論的に検討した。我々はFe, Co,Ni, Cuの含有ゼオライト(MFI)について理論的に考察した。ポテシャルエネルギー面の解析から、メタンとの反応性はCo, Ni, Fe, Cuの順に大きくなる。いっぽ う、メタノール収率はFe, Co, Nu, Cuの順となる。これらと気相中のMO+イオンによるメタン水酸化反応とを比較することでゼオライト骨格の役割についても明らかにした。ゼオライト骨格はC-H結合開裂を促進し、メタノール生成比を向上させることが分かった。 細孔サイズの小さな銅ゼオライトは細孔サイズの大きなものに比べてメタノール収率がよいことが知られている。我々はゼオライト触媒の細孔効果を調べるために、細孔サイズの異なるゼオライト(AEI, CHA, AFX, MFI)内で酸素架橋銅複核錯体とメタンの反応性について周期的境界条件を満たすDFT計算により考察した。細孔サイズが小さいほど歪みがおおきくなり、架橋酸素の結合角が減少する。これらの構造的歪みとメタンのC-H結合解離の活性化エネルギーは相関し、実 験結果をうまく説明することができた。また、分子軌道法による解析からもメタンと架橋酸素の反応性は酸素上の分子軌道係数の大きさと関係し、架橋酸素の結合角に依存することがわかった。
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