研究実績の概要 |
本年度は、(1)「非貴金属ニッケル・鉄分子触媒による水素と酸素の活性化メカニズムの解明」と(2)「水素と一酸化炭素を両方酸化できる分子触媒の開発と燃料電池用電極触媒への応用」を推進し、論文とプレスリリースにて成果を発信した。具体的な内容を以下に記述する。 (1)研究テーマ「非貴金属ニッケル・鉄分子触媒による水素と酸素の活性化メカニズムの解明」:ニッケル・鉄ヒドロゲナーゼモデル錯体による水素と酸素の活性化反応を速度論的に解析し、いずれの反応もミカエリス・メンテン型であることを明らかにした。さらにアイリングプロットより活性化エンタルピーと活性化エントロピーを決定した。中心金属の酸化還元電位と活性化自由エネルギー変化をプロットすると、自由エネルギー直線関係となることを明らかにした(Organometallics 2017, 36, 3883)。ニッケル・鉄錯体を用いてこのように詳細に速度論的解析を行った例は本研究が初めてである。 (2)研究テーマ「水素と一酸化炭素を両方酸化できる分子触媒の開発と燃料電池用電極触媒への応用」:ヒドロゲナーゼは水素を酸化する酵素であり、一酸化炭素デヒドロゲナーゼは一酸化炭素を酸化する酵素である。これらに共通する構造を人工的に分子レベルで再現することで、水素と一酸化炭素を両方酸化できる触媒を開発し、燃料電池用電極触媒として応用した。燃料電池に用いる白金触媒はごく微量の一酸化炭素で被毒され、触媒性能を失活することから、高コストの超高純度水素を必要とする。本分子触媒を用いることで、粗水素で十分に燃料電池が駆動可能であることを明らかにした(Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 9723、表紙に採択、Hot Paperに選出、プレスリリース:2017年6月7日「水素と一酸化炭素を燃料とする燃料電池の開発」)。
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