研究実績の概要 |
本研究では配向制御SURMOF(Surface-mounted Metal Organic Framework)における制御の基本原理解明を目的とする。多孔性配位高分子は高い構造規則性により分子選択性を有しており、また、溶液中での自己集合化という合成面での利便性も持ち合わせている。こうした特性をさらに高度化・多機能化するため、近年、固体表面への薄膜化が活発に進められている。しかし、もっとも重要な設計指針の一つである配向に関する制御原理は未だにブラックボックスとも言われている。 本研究では固体表面におけるSURMOFの配向制御原理について放射光X線吸収分光法(XAFS)を軸とした表面科学的アプローチにより解明する。 本年度は、1)単結晶表面におけるSUURMOFの構造解明に重点をおきながら、2)SURMOFs境界面構造の結合様式を精密に決定するため、極低温偏光全反射蛍光XAFS測定装置の設計と試作を実施した。 1)については、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸で修飾したTiO2(110)単結晶表面に、テトラカルボキシフェニルポルフィリン(TCPP)を含む MOF薄膜の形成条件を検討した。今後、FT-IR, XPS, XRDなどにより構造の詳細を検討する。 2)については、熱的揺らぎ(動的揺らぎ、デバイ―ワーラ因子)によるXAFSへの影響を抑え、SURMOFの構造をより精密に決定するため、極低温偏光全反射蛍光XAFS装置の基本設計と試作を行った。具体的には、極低温下で数ミリラジアンという全反射条件を満たせるよう、機械的振動が極めて小さいHeフロー式クライオスタットを改造し、新規に設計した全反射自動ステージと組み合わせた。テストの結果、課題(温度制御、偏光依存性測定機構、汎用性など)はあるものの、極低温(10 K)で全反射蛍光XAFS測定が実現できる可能性を見出した。
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