研究実績の概要 |
本年度は酸フッ化物に着目し、以下の研究を行った。 ・ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたトポタクティックな反応による酸フッ化物合成手法の改良…酸フッ化物を合成する手法の一つに、酸化物をベースとし、その構造を保ったままフッ化物イオンを化学的に導入する方法がある。本年度はBi4V2O11という酸化物にPVDFを用いたフッ化処理を行い、層状酸フッ化物Bi2VO5Fの合成を試みた。結果、PVDFをモル比にして0.75加え、空気中400℃、10分間という短時間の熱処理で酸フッ化物が得られることを発見した。また、同様にPb3V2O8に対してもPVDFで処理を行うとアパタイト化合物Pb5V3O12Fが得られることも発見した。今回合成をおこなったものは既報の物質ではあるが、トポタクティックな反応による酸フッ化物の合成手法が有効であることを示す結果である。特にビスマスを含む系などにおいては、この手法が有効であると期待される。特に高圧合成法のみでしか得られないPb,Bi含有酸化物に本手法を応用すれば、従来の手法では得られなかった新しい酸フッ化物ができる可能性がある。 ・アパタイト化合物における負熱膨張…フッ化物アパタイトPb5V3O12Fにおいて、低温領域で負熱膨張が起こることを発見した。この負熱膨張はc軸長が冷却すると伸びるために起こっている。アパタイト化合物の構造において、c軸長はPb-F結合に支配されている。よって、これはPb-F結合の特異性に由来すると考えられる。加えてBa5V3O12FとSr5V3O12Fの合成も行っており、これらとの比較から、負熱膨張特性の起源を明らかにすべく、精密構造解析や熱機械分析を行っていく。
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