研究課題/領域番号 |
16K05732
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小澤 寛晃 中央大学, 理工学部, 助教 (50464152)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ルテニウム錯体 / グラフェン / ピレン / ホスホン酸 |
研究実績の概要 |
酸化還元特性を有するルテニウム金属錯体と優れた電気特性および高い比表面積を有するグラフェンやカーボンナノチューブなどのナノ炭素材料のとの新規電気二重層キャパシタの創製を目的としている。その目的達成のために「グラフェンやナノチューブ表面に強固に吸着可能なルテニウム錯体の合成」、「金属錯体とナノ炭素材料との吸着挙動評価」、「高容量の3次元複合体の創製」を課題としてあげており、これまでに1つ目の課題であるナノ炭素材料表面に吸着可能なピレンアンカー基とホスホン酸基の異なるアンカー基を有するルテニウム錯体の合成に成功している。特にナノ炭素表面にπ―π相互作用によって吸着ことが知られているピレンアンカーに関して、配位子中に導入するピレンアンカー基の数を2,4と異なるものを合成した。さらに、ピレンアンカー基の数の異なる配位子とホスホン酸基持つ配位子を用いて目的のルテニウムを合成した。今後、目的のルテニウム錯体が持つピレンアンカー基の数の違いを利用し、炭素材料表面への吸着挙動の違いを評価する予定である。また、ホスホン酸アンカー基を用いてITOやFTOなどの導電性酸化物基板への吸着および、電気測定、吸着挙動評価を行いたいと考えている。 それらのルテニウム錯体は1H NMR、FT-IR、MS測定により同定し、合成をできたことを確認している。さらに溶液中でのルテニウム錯体の電気化学特性などをサイクリックボルタンメトリ測定により評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度の研究計画で示した「グラフェンやナノチューブ表面に強固に吸着可能なルテニウム錯体の合成」について研究を進めた。その目的となるルテニウム錯体の設計として、ピレンアンカー基とホスホン酸アンカー基を持つルテニウム錯体を設計し、合成に成功した。とくに、ピレンアンカー基を有する配位子はピレンアンカー基の数の異なる2種の配位子の合成を行った。加えて、NMRやMS測定により同定および電気化学測定や吸収スペクトルなどの物性評価を行うことができた。さらに、炭素材料表面やITO基板表面への錯体修飾を成功しつつあり、固体表面での錯体の物性評価にも取り組んでいる。これらのことより、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
まず今後取り組む課題として「金属錯体とナノ炭素材料との吸着挙動評価」がある。これまでに合成したルテニウム錯体を用いてグラフェン可溶化溶液を作製する。グラフェン溶液作製にはルテニウム錯体を用いて超音波処理により粉末グラファイトから直接グラフェンを剥離する方法もしくは可溶化した還元型酸化グラフェンにルテニウム錯体を吸着させる方法を用いて作製する。得られた複合体溶液はろ過やスピンコート、キャスト法を持ちいて薄膜など構造体を作製する。複合体作製の後、作製した複合体は電子顕微鏡により構造観察を行う。その後、吸収スペクトルなどによる分光化学解析を行い、複合体の光物性や電極表面での複合体の積層量の評価を行う。また、X線を用いた解析により、グラフェン間の距離など、複合体の積層構造の詳細を明らかにしていく。さらに電気化学測定により、錯体の吸着挙動評価、EQCM測定により、酸化還元時のイオンの取り込み・放出量を評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
76円で購入できるものがなく、使い切ることができなかったため、来年度に繰越を行った。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の試薬の購入費や雑費の端数の支払いに利用する。
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