研究実績の概要 |
低価数Nb化合物およびその類縁物質の高品質エピタキシャル薄膜の合成と物性評価に取り組んだ。 窒素組成を系統的に変化させた一連のペロブスカイト型SrNbO1-xNxエピタキシャル薄膜の低温電気輸送特性の評価と解析を行った。SrNbO2N(x = 1.02)からx=0.96に微かに窒素量を低減することで、アンダーソン局在理論の枠組みにおける絶対零度での金属絶縁体転移が観察された。くわえて、SrNbO2N エピタキシャル薄膜の電気抵抗率の温度依存性を測定したところ、2 Kから温度を上げるにつれてホッピング伝導から熱励起型の伝導へと推移する電気伝導機構の推移(クロスオーバー)挙動が観察された。これは構造中の窒素により形成されるランダムネスとNbの4d電子が持つ電子相関が複合的に電子伝導に寄与した結果であると考えられる。 一方、SrNbO3組成では極めて高い電気伝導性を持つ金属的な振る舞いが見られたので、原子レベルの構造歪みがより小さいと考えられるBaNbO3のエピタキシャル合成と物性評価に取り組んだ。ペロブスカイト型酸化物単結晶基板上でBaNbO3のエピタキシャル合成に成功した。SrNbO3では低温でキャリア濃度が低下したのに対し、BaNbO3ではほぼ100%のキャリア活性化率が見られ、構造歪み抑制の効果が観察されたといえる。しかしながら、基板との格子不整合に由来して結晶性と電子移動度の低下がみられたため、格子定数の大きな(Sr,Ba)SnO3のバッファー層の導入を行った。簡便な溶液プロセスを活用して(Sr,Ba)SnO3のエピタキシャル合成を行ったところ、最適条件で高い結晶性を示す薄膜が得られた。得られた薄膜をバッファー層としてBaNbO3エピタキシャル薄膜を堆積すると結晶性が大きく向上した。
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