研究課題/領域番号 |
16K05741
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
堀内 宏明 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (00334136)
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研究分担者 |
奥津 哲夫 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20261860)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光線力学療法 / 光増感剤 / 活性制御 / 超音波 / 会合体 / 自己消光 |
研究実績の概要 |
ガンの光線力学療法における光副作用を低減するために、超音波照射による光増感剤の活性制御を行った。 まず、これまでに開発した超音波応答性光増感剤(SiPC4)を用いて超音波応答性の改良を行った。SiPC4は4個のカルボキシ基を持ち、水中でpHを低下させることにより水溶性を低下させて会合体を形成させていた。この会合による自己消光により一重項酸素を生成しないOFF状態とし、超音波照射による単量体への解離によりON状態にスイッチさせていた。この超音波応答性には初期の会合状態における分子間相互作用の大きさが重要であるとの仮説が得られていた。本年度は水溶液のpHを変化させることにより、SiPC4のカルボキシ基のプロトン化率を変化させ、分子間相互作用を制御した。その結果、pH 6以下では会合体を形成しOFF状態でありつつも、pH変化により会合状態が変化し分子間相互作用が制御できることがわかった。このpH領域で超音波応答性を調べた結果、pHが高い方が一部のカルボキシ基がイオン状態となり、分子間相互作用が弱められ、超音波への応答性が高くなることがわかった。 次に超音波応答性を高める別アプローチとして、水溶液中で会合数が小さくなる光増感剤の分子設計および合成を行った。光増感剤には疎水性のポルフィリンを用い、その平面の片側に親水性基を導入した両親媒性分子を設計した。この親水性基の極性を変えることにより、会合状態における分子間相互作用を制御し、会合数の変化が超音波応答性に与える影響を研究することが目的である。今年度は、親水性置換基無し、ヒドロキシ基が1個、カルボキシ基が1個、カルボキシ基が2個の計4化合物を合成した。またこれらの化合物が水溶液中で会合体を形成し、自己消光によりOFF状態になることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大きく分けて2つの計画を同時進行しているが、どちらも当初計画していた内容を完遂できたため。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、H28年度に合成した両親媒性の光増感剤の水溶性、両親媒性などを評価する。また、濃度効果を研究することにより会合体の形成特性を明らかにする。次に、単量体および会合体について一重項酸素の光増感効率を始めとする光化学的性質を研究し、会合体の形成による光機能の変化を明らかにする。さらに会合体に対して超音波照射を行い、単量体への変化を、紫外可視吸光法、蛍光法などによって評価し、また一重項酸素の生成効率の変化を明らかにする。 一方、両親媒性の光増感剤とは異なるアプローチによる超音波応答型の光増感剤も研究する。両親媒性の光増感剤では超音波によって単量体が形成しても、再び会合体に戻り、この逆過程により超音波応答性が効率化できない可能性がある。そこで超音波化学反応によって疎水性から親水性に不可逆的に変化するユニットを光増感剤に導入した分子を検討する。この不可逆系では、単量体が蓄積できるためにスイッチング効率の向上が期待できる。H29年度から超音波応答性ユニットを有するポルフィリンの設計・合成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
公務のため、学会への参加ができなかったことがあり、その分の予算が余ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に研究を加速するために、繰越予算を用いて研究に必要な消耗品を購入し、万全の体制を整えたい。
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