研究課題/領域番号 |
16K05748
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
沓水 祥一 岐阜大学, 工学部, 教授 (80214964)
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研究分担者 |
三輪 洋平 岐阜大学, 工学部, 准教授 (10635692)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 双連続キュービック構造 / 液晶 / 分子デザイン / メゾスコピック系 / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
引き続き分子設計指針確立のためのライブラリー構築を推し進めた。 (1)スチルベンの二重結合をアゾ基-N=N-に置き換えた化合物の相挙動の系統的な検討を行った。スチルベンに比べてその二重結合をアゾ基に置き換えた場合には、透明点Tcが約20K低下し、層状構造のスメクチック(Sm)相の温度域が拡大した。アルキル鎖炭素数nが18以下では双連続キュービック(Cub_bi)相は発現せず液晶相Sm相のみとなった。 (2)一方、アゾ基に対してオルト位に1個メチル基を導入すると、n=7から22までの全領域でCub_bi相(n=22を除くとIa3dジャイロイド相のみ)の形成が見られた。この結果はコアの骨格に関して効果的にCub_bi相形成をもたらす知見として極めて有益である。 (3)さらには、(片側がベンゼン環の非対称化合物の)n=7の化合物について、アゾ基に対してオルト位に1個メチル基、メタ位に1個メチル基、オルト位に2個メチル基を導入した場合を比較すると、結晶相とCub_bi相(Ia3d相)の境の転移温度はほぼ同程度ながら、メタ位に1個メチル基を導入した場合が最も効果的にCub_bi相を形成することがわかった。 (4)機能開拓のための部位置換では、アゾ基含有化合物の光応答性において、異なる液晶系ではあるが、シアノ基を側方置換基に持つビフェニルカルボン酸系の二成分系において、UV光に対する耐性に極めて優れた系の構築に成功した。 (5)一方、芳香環をつなぐジカルボニルヒドラジン基を尿素基、あるいはアミド基1個に置換した化合物の合成も進めているが、Cub_bi相発現化合物の開発には成功していない。前者においては、その化合物単独もしくは両側の芳香環がベンゼン環のCub_bi相発現化合物との二成分系において、電場応答挙動の検討も行っているが、強誘電性などの発現には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二つの研究目的の内、(1)の「Cub_bi相を与える棒状分子のデザイン指針」については、芳香環のさまざまな部位にメチル基を導入することで、Cub_bi相形成の際に重要な分子配列のねじれにさまざまな効果を持つという新しい知見が得られ、IR測定による内部の運動性や分子間相互作用の実験的な知見の蓄積も進んでいるが、一方で量子化学計算などによる理論的な側面からの説明はできておらず、それが課題となっている。 (2)の機能開拓については、もとより挑戦的な課題ゆえに、全ての部位改変から対応して有用な機能が出てくることは期待しがたいとはいえ、いまのところ、新たな機能開拓には至っておらず、さらに集中して探索が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗状況を踏まえ、
(1)の「Cub_bi相を与える棒状分子のデザイン指針」については、新たに見出された芳香環のさまざまな部位に導入したメチル基の効果を合理的に説明し、デザイン指針の基盤を構築する。「Im3m型Cub相」のらせん配列形成がどういうときに安定化し、あるいは不安定化するかを調べる。これらにより、「低分子Cub_bi相化学」の構築を行う。
(2)については、特にアゾ基を導入した化合物のUV照射による積層変換、キラル分掌挙動などに注力して、機能開拓探索を行う。平成31年以降の「ソフトな機能性材料の開発」の展開につながる「低分子Cub_bi相工学」の礎を築きたい。
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