研究課題/領域番号 |
16K05749
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
森末 光彦 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (40403357)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ポルフィリン / 超分子 / ナノテクノロジー |
研究実績の概要 |
ポルフィリン亜鉛錯体と、この配位子であるピリジル基を交互に配列したポルフィリンアレーは、ピリジル基とポルフィリン亜鉛との間での自己相補的配位結合形成により、トルエン溶媒中において安定な二重鎖構造を形成することをこれまでに明らかにしている。この剛直な直線状の構造をビルディングユニットとすると、直線状の超分子構造を構築できると考えられる。一方で、分子を一次元的に伸長していくと、排除体積効果により主鎖上の離れた2箇所間が相互作用を持つ。この結果、特に希薄溶液中で、原理的に主鎖は環状構造を形成しやすくなることが知られている(Jacobson-Stockmayer理論)。特に主鎖形成が動的な超分子ポリマーは、一般的に希薄溶液中では主鎖は伸長できない。このような背景から、分子を一次元方向に一直線状に伸張した構造を構築するためには、主鎖が直線上で剛直であり、かつ希薄溶液中でも主鎖伸張に平衡が偏るための高い結合定数が必要である。二重鎖形成ポルフィリンアレーをhead-to-tailで連結してテレケリック型に連結した分子を合成し、これを超分子ポリマー化した。NMRによる拡散係数測定(DOSY)の結果、拡散係数は濃度上昇に伴って低下したことから、超分子ポリマー主鎖が濃度上昇に伴って伸長したことがわかった。また小角X線散乱の結果も、この主鎖伸長の平衡の存在を支持した。一方、サブマイクロM程度の濃度以上では、吸収スペクトル、円偏光二色性スペクトルは全く変化しないことから、主鎖は末端基効果を無視できるほど伸張していることがわかった。透過型電子顕微鏡観察の結果、超分子ポリマー主鎖はトルエン溶液中で数マイクロメートルスケールで直線状に伸長したことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に合成中の分子の合成経路の改良により、合成の効率化を行うことができた。また、種々の観察手法を組み合わせることによって、効率的に組織化構造を観察・評価する手順を確立できた。
|
今後の研究の推進方策 |
分子設計に基づき分子スケールをはるかに超えるサイズ領域で、構造・形状を制御しこれを評価する方法はおおよそ確立したが、物性がどのようにこれと相関しているのかが、今後の最重要検討課題である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、蛍光量子収率を決定するための積分球を予算計上したが、これを新学術領域研究の予算内で購入できた。また、薄膜作成用のスピンコーターを計上したが、年度内の使用頻度が低いことから購入を次年度以降に見送ったことが、主たる理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
使用頻度に応じて薄膜作成用のスピンコーターの購入を行う。また、合成に使用する試薬・溶媒類、また学会発表の旅費・参加費などに使用する。
|