研究課題/領域番号 |
16K05753
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
白上 努 宮崎大学, 工学部, 教授 (60235744)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン液体 / 発光材料 / センサー / 外部刺激 / 有機高分子 |
研究実績の概要 |
発光性イオン液体(PFCP-IL)を含むポリメタクリル酸メチル(PMMA)複合膜(PFCP-IL/PMMA)に熱履歴(一定の時間加熱後、室温へ冷却する)を与えると、PFCP-ILの発光強度が増強する「熱誘起発光増強特性」を示す。この特性は、PFCP-ILが熱による高分子鎖のセグメント運動と協同して移動し、発光会合体を形成することで誘起される。本研究では、熱以外の外部刺激として、機械的刺激および電気刺激を選択し、これらの外部刺激に応答したPFCP-ILからの発光増強現象の観測を行うことを目的としている。 今年度は、高分子鎖への伸縮運動のような機械的な刺激によるPFCP-ILの発光増強効果の可能性を探るために必要なPFCP-IL高分子複合体の調製を検討した。種々のアクリル系高分子を検討した結果、ポリメタクリル酸ブチル(PBMA)との複合化によって得られたPFCP-IL/PBMA複合体が、透明度が高く、最も柔軟性が高くなる(ガラス転移温度(Tg)が最も低い)ことがわかった。また、弾性率の測定から、この複合体はゾル状態に近い粘弾性をもつ高分子であることもわかった。さらに、伸縮運動前後による光路長の変化を検討した結果、運動前後では全く変化しないこともわかった。次年度は、この複合体を用いて、伸縮運動前後のPFCP-ILからの発光強度を測定する予定である。 高分子の可塑性を高めることが期待できる非発光性イオン液体(イミダゾリウム系イオン液体)と混合させたPFCP-IL/PMMA複合体の調製を検討した結果、透明でかつTgが低い可塑性複合体が得られた。この複合体に60℃の熱履歴を与えると、約2倍程度の発光増強が確認された。これまで、発光増強可能な熱履歴温度は、100℃~150 ℃までの高温領域であったが、今回、高分子を可塑化することで、60℃の低温領域においても可能となることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械的刺激として伸縮運動に対応できるPFCP-IL有機高分子複合体の開発においては、次の条件を満たす複合体の調製が必要である。発光の測定が可能となる透明度の確保、柔軟性および粘弾性の確保および伸縮運動前後の膜厚保(光路長)の保持。これら3つの条件を満たす複合体の調製に成功したことから、当初の研究実施計画が記載された内容は、ほぼ達成できていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
複合体をノギス上に固定化し、ある一定距離まで複合体を伸ばす装置の作成も完了していることから、次年度の研究目標である「伸縮運動に応答した発光増強の観測」を実施する方策はできている。また、粘弾性率の測定等、外部研究機関への依頼も行っており、次年度以降の研究が推進できる体制は整えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、電気化学用LED光源(物品費)の購入を予定していたが、申請金額が減額されたため、本年度購入することができなかった。そのため、翌年度の助成金と合わせた購入を計画している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、物品費の中の試薬購入費および電気化学発光用LED光源購入費として、併せて使用する予定である。
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