発光性イオン液体(PFCP-IL)を含むポリメタクリル酸メチル(PMMA)あるいはポリ塩化ビニル(PVC)等の有機高分子複合体に熱履歴(一定の時間加熱後、冷却する)を与えると、PFCP-ILからの発光強度が増強する「熱誘起発光増強特性」を示す。この特性は、PFCP-ILが熱による高分子鎖のセグメント運動と協同して移動し、発光会合体を形成することで誘起される。本研究では、熱以外の外部刺激として、機械的刺激および電気刺激を選択し、これらの外部刺激に応答したPFCP-ILからの発光増強現象の観測を行うことを目的としている。 今年度も昨年度に引き続き、外部刺激として電気刺激に着目し、交流電圧印加によるPFCP-ILの直接移動に伴う発光増強について検討した。これまで、有機高分子としてポリメタクリル酸ブチル(PBMA)を用いて検討したが、今回、より高分子自身の導電性を向上させ、かつ高分子内におけるPFCP-ILの流動性を増加させるために、イオン性架橋剤を導入した有機高分子の調製を検討した。具体的には、2つのアンモニウムカチオンを有する架橋剤をPMMAに導入した高分子を用いた。その結果、これまでのPBMAと比較して、140℃の高温下で交流電圧を印加すると、約1.5倍発光強度が増強することがわかった。これは、架橋することで、高分子複合体のガラス転移温度がより減少することから、高温下におけるPFCP-ILの移動障壁が減少したためと推測された。以上のことから、電気刺激においても、高分子複合体の柔軟性が、PFCP-ILの発光会合体形成を促進させ、結果として大きな発光増強が得られることを明らかにすることができた。
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