研究課題/領域番号 |
16K05754
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
秋山 毅 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (20304751)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超分子 / n型有機半導体 / 有機薄膜太陽電池 / フラーレン / ホールブロッキング / 電子輸送層 |
研究実績の概要 |
有機電子材料としてフラーレン類は有用であり、その用途のために多種多様なフラーレン誘導体が開発されている。研究代表者らは、フラーレンを主鎖に含む高分子の実現を目指してフラーレン-ジアミン付加体を開発し、電子受容体あるいはn型半 導体材料として機能することを実験的に見出し、いち早く報告してきた。本研究ではこれらの成果を基に、超分子化学に基づいた一次 元フラーレン重合体を合成し、その構造と特性の相関を見いだすことを目的として検討を進めている。 平成29年度には、特に無置換のフラーレンと水溶性ホスト分子からなる水溶性(あるいは水分散性)包摂錯体の重合反応について検討を進めた。単量体となる、これらの錯体の吸収・発光特性からは、水溶性錯体中でもフラーレン骨格はその電子状態を維持していることが示唆された。これらの錯体の重合体と考えられる物質は、対応する単量体錯体と比較して、顕著に吸収・発光特性が変化し、分子サイズについても重合反応が進行したことをしさせる結果を得た。また、重合体と考えられる物質は、良好な成膜性を示し、有機薄膜太陽電池やサンドイッチ型薄膜デバイスの構成部材として評価することができた。その結果、これらの重合体と考えられる物質の薄膜は、電子輸送能、ホールブロック能を示すことが明らかとなり、各種の薄膜電子デバイスの構成部材として適用可能であると考えられる結果を得た。 以上から、本研究で開発する一次元フラーレン誘導体の中核となるフラーレンは必ずしも化学的に置換されている必要はなく、無置換体であっても十分な機能を発現する可能性が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)フラーレン重合体の合成、(2)フラーレン重合体の構造解析と光化学特性の評価、(3)フラーレン重合体の電子材料特性評価、を通して有機電子材料としてのフラーレン一次元重合体の創製につなげるべく研究を推進している。 これまでに、・フラーレンと水溶性ホスト分子との水溶性(水分散性)錯体の振動粉砕法を積極的に活用した作製、・フラーレン-ホスト錯体の重合反応の実施と、水溶性重合体と考えられる物質の生成、・水溶性フラーレン-ホスト分子錯体重合体と考えられる物質の光化学特性、分子サイズ、電子デバイス応用 に主眼を置いて検討を進めてきた。 特に、平成29年度には、無置換のフラーレンと水溶性ホスト分子との錯体を単量体として用いても十分に電子材料として価値の高い重合体が得られることが強く示唆され、将来のより広汎な応用にもつながる知見と言える。以上の検討に加えて、関連する、より基礎的な検討内容を含む研究成果についても、学会・シンポジウムなどでの発表、学術論文としての発表を進めており、全体として概ね計画通りに研究が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)フラーレン重合体の合成、(2)フラーレン重合体の構造解析と光化学特性の評価、(3)フラーレン重合体の電子材料特性評価、をさらに詳細かつ網羅的に展開する。 特に、平成30年度は、フラーレン類とホスト分子からなる重合体について、より詳細な構造を明確とし、一次元分子ワイヤーの生成条件を見出す。また、これらの知見を元に、フラーレン-ホスト分子包摂錯体を基軸とした重合体ライブラリの構築、関連する諸特性の評価と検討を進める。 以上の方針で研究を展開していけば、本研究の目的が達成されると考えられる。
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