フラーレン類は特徴的な電子受容性を示し、n型半導体として各種有機エレクトロニクス素子に用いられている。このフラーレン類を主鎖に含む高分子型のn型半導体材料を簡便に得ることができれば、基礎科学と実用応用の双方の観点から魅力的な材料となり得る。研究代表者らは、フラーレンを主鎖に含む高分子の実現を目指してフラーレン-ジアミン付加体を開発し、電子受容体あるいはn型半導体材料として機能することを実験的に見出し、いち早く報告してきた。本研究ではこれらの成果を基に、超分子化学に基づいた一次元フラーレン重合体を合成し、その構造と特性の相関を見いだすことを目的として検討を進めてきた。 平成30年度は、フラーレン類とホスト分子からなる重合体について、平成29年度に得られた成果に基づいて、より詳細な検討を進めた。その結果、各種有機エレクトロニクス素子を構成する実用的な材料としての可能性が十分に高いことが示唆される結果を得た。さらに、フラーレンの重合体微粒子が生じる反応について、電子顕微鏡、X線回折、吸収スペクトル、などを用いて詳細に検討し、予想される生成機構から重合体微粒子のサイズ制御の可能性が高いことが明らかとなった。関連して、これまで明確とは言い難かったフラーレン-ジアミン付加体の微細構造についても検討を進めた。この結果からもフラーレン-ジアミン付加体の生成機構を検討し、今後のフラーレン-ジアミン付加体の化学を拡大するための礎となる知見を得ることができた。また、フラーレンージアミン付加体を基軸とするホールブロック特性を発現する電子輸送材料について、この材料自体の光化学特性に着目した検討を行ない、この材料の薄膜のみを修飾した電極においても、良好な光電変換特性を発現することが明らかとなった。
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