研究課題/領域番号 |
16K05755
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松原 浩 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20239073)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機二次電池 / 正極活物質 / ベンゾキノン |
研究実績の概要 |
効率の良い二次電池正極活物質として有機化合物が期待されるが、現行の無機リチウムイオン電池を凌駕する材料は未だ現れていない。今までに、ベンゾキノン(BQ)にペルフルオロアルキル基を導入すると高い出力電位を持つ安定な正極活物質となることを見出したが、容量密度が小さいことと、充放電を繰り返すと電池容量が低下する問題があった。本研究では、BQを多量化することで容量密度とサイクル特性を同時に向上させることを目指す。具体的には、BQ多量体の合成と活物質としての評価を行い、更に計算化学を活用して分子構造と電池性能の相間を探索し、構造と物性に関する指標を構築する。 昨年度に引き続き本年度もBQユニットが2つ連結したBBQを用いて二次電池セルの作製条件の検討を行った。特に、正極活物質の濃度が電池特性に与える影響を詳細に検討した結果、昨年度見出されたBBQの濃度が20%のときに最も高い容量を示す現象は再現性がなく、活物質濃度が大きくなると容量は単調に減少する一般的な特性に一致することが分かった。 また、電解液としてカーボネート系、グライム系、スルホン系、およびエーテル系について詳細に電池性能を比較した結果、カーボネート系が最も優れていることが確認できた。しかしながら、いずれの電解液を用いてもサイクル特性の改善には至らず、更なる検討が必要である。 さらにBBQとはキノン骨格が異なるo-BBQの合成検討を行った。出力電位の指標となる分子軌道準位の計算を行ったところ、o-BBQは従来のBQ二量体であるp-BBQよりも出力電位が高くなることが予想された。そこで合成に着手した。目的のo-BBQを出発原料1,2-dimethoxybenzeneから3工程で合成する計画を立て、1工程と2工程は上手く進行し、目的の中間生成物を得ることができた。現在、最終工程のブラッシュアップを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年中にベンゾキノンの構造が異なるo-BBQの合成を完了し、それを用いた二次電池の性能評価まで行う予定であったが、o-BBQを得る最終工程の反応が複雑であり、評価するのに十分な量の目的物を得ることができなかった。 また当初の目的である、サイクル特性のよい有機二次電池の作製条件を見出すには至っていないことも挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終段の反応が複雑な理由は、この段階で強固な保護基であるメチル基を脱離させる必要があるが、反応によって生成するオルトキノンが不安定であることに起因する。そこで、低温で一気に反応を進行させ、直ちに生成物を分離することを考えている。 サイクル特性を向上させるために、まずはサイクル特性が低下する原因として一般的に考えられている「活物質の電解液への溶出」と「活物質の分解」のどちらが起こっているのかをBBQを用いて明らかにする。その知見に基づいた上で電池セルの組み立て方法を見直し、サイクル特性の優れた二次電池の開発を目指す。サイクル特性の向上案として、具体的にはイオン型の活物質を用いて二次電池を作製することや、半固体やポリマーの電解液を使うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 試薬やガラス器具、二次電池セルの作製材料などは研究室保有の物品を最大限活用した。さらにセルの作製と評価に当たっては昨年度に引き続き産業技術総合研究所の協力も得られたため材料費を大幅に節約することができ、結果的に約145万円の未使用研究費が生じた。 (使用計画) 次年度は更なる高性能有機二次電池の開発を目指し、オルト二量体(o-BBQ)の合成、および二次電池セル作製条件の最適化を行う。そのため以下の内容で研究費を使用する計画である。(1)o-BBQの合成(薬品:50万円、合成実験 器具:30万円)(2)BQ類に最適な二次電池セルの構築(二次電池材料:40万円、評価費用:20万円)(3)研究成果発表(電池討論会):5万円、合計145万円
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