研究実績の概要 |
昨年度合成方法を確立したトランス位に4-ピリジル基を有する3種のポルフィリンtransDPyDPP, TPyMPP, TPyPと Mnイオンを用いた溶媒熱合成の条件検討によって 本研究の目的とする一次元ナノチャネルを有する配位高分子化合物transDPyDPP_Mn, TPyMPP_Mn, TPyP_Mnが得られた。単結晶X線結晶構造解析により、ナノチャネル内に取り込まれた溶媒分子を含め た構造決定を行った。昨年度transDPyDPP_Mn, TPyP_Mnの熱測定により、ナノチャネルの内部を向く置換の種類により空孔内部に取り込まれた溶媒の脱離・再吸着の挙動か異なることを明らかにしたが、本年度さらにTPyMPP_Mnについて熱測定を行い、transDPyDPP_Mn, TPyP_Mnのいずれとも異なる溶媒の吸脱着挙動を示すことを明らかにした。以上の3例から、空孔内部からの溶媒分子の脱離はいずれも場合も80℃前後から起こるが、空孔内部に向くピリジル基の数が多いほど空気流下においたときの水分子の吸着量が多く、フェニル基のみのときは全く水分子を吸着しないことが明らかになった。transDPyDPP_Mn, TPyP_Mnへの水分子の吸脱着は可逆的に起こり、さらにこれらの骨格が350℃付近まで安定に存在することがわかった。 また一次元ナノチャネルの空孔サイズの拡大を目的として、新たにトランス位に4-ピリジル基のみを持つ5,15-bis(4-pyridyl)porphyrin(5,15-DPyP)を設計・合成・同定した。(5,15-DPyP)と酢酸亜鉛、酢酸銅、酢酸マンガンを基質とし、直管を用いた拡散法による遷移金属錯体の合成を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
一次元ナノチャネル構造体内部に溶媒を包接したtransDPyDPP_Co, transDPyDPP_Mn, TPnMPP_Mn, TPyP_Co, TPyP_Mnのうち、主に水を含んだ化合物について単結晶での誘電率の測定を研究協力者と協同して行う。 またより積極的に水分子をナノチャネル内に包接させるため、空孔内部にヒドロキシル基が向くことが期待される新たな配位5,15-bis (4-hydroxyphenyl)-10,20-bis(4-pyridyl)porphyrinを合成し、溶媒熱合成法によりチャネル構造を持つ配位高分子を作製する。 さらに5,15-bis(4-pyridyl)porphyrin(本年度合成法を確立)を大量合成し、フラーレン 共存下溶媒熱合成法・拡散法を行うことにより、配位高分子で形成された一次元ナノチャネル内にフラーレンが配列した超分子構造体の構築を目指す。得られた 金属ポルフィリンーフラーレン構造体の構造を単結晶構造解析により明らかにし、またそれらの電気化学的性質を研究協力者と協同して行う。
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