研究課題
今年度は有機合成的な酸素含有官能基の導入以外に非平衡的なマイクロ波合成によるグラフェンの酸化,さらに磁性を持つNiなど遷移金属あるいは光官能性も持つCdSe粒子との複合化および窒素原子の導入を行って基礎的な磁性と触媒活性との相関,さらには光照射時の基礎的なデータの収集を行った.また,グラフェンのみならず同じ炭素物質であるダイヤモンドおよびC60についても物性および触媒効果の評価を行った.特にマイクロ波合成による酸化グラフェンの合成では合成中の活性酸素種のグラファイト層間挿入に由来する特異的なナノ空孔構造を持つグラフェン触媒が得られ,ニトロベンゼンの還元触媒として高い活性を示すことを明らかにした.また,この特異な構造を反映した非常に広幅なESR線幅を持つエッジ状態由来の局在スピンの存在が確認された.また,Niとの複合化においてもニトロフェノールの還元における光触媒活性が示唆された.これらの結果により,炭素材料における局在磁性から各種触媒活性との相関がある程度推定できることを明らかにした.今後は酸化や窒素ドープあるいは遷移金属との複合化のような化学構造の制御が難しい手法ではなく,原子レベルで化学構造が定義された分子を用いたグラフェンの修飾を行うことにより新たな炭素触媒の開拓を目指す.また,本研究課題で得られた成果についてはCarbon誌などの国際論文誌における論文発表により公開を行った.
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