平成30年度は、前年度までに開発した純度の高いキラル銀(I)メトキシドの調製法を使って、アルデヒド類の触媒的不斉アレニル化/プロパルギル化反応について研究を行った。単純なアルデヒドである4-ニトロベンズアルデヒドを基質に用い、プロパルギル型トリメチルシランをアレニル化/プロパルギル化剤として反応条件の最適化を試みたところ、光学活性ホスフィン配位子にDM-BINAP、銀塩にテトラフルオロホウ酸銀、アミンにトリエチルアミン、アルコールにメタノール、添加剤としてフッ化カリウムを用いるのが最も効果的であり、生成物の単離収率およびエナンチオ選択性の全てにおいて良い結果が得られることがわかった。さらに本反応において、求電子剤として芳香族アルデヒドを用いるとアレニル化体が主生成物として得られ、脂肪族アルデヒドを用いるとプロパルギル化体が主生成物として得られることがわかった。このアレニル化/プロパルギル化反応については論文発表を行った。 一方で、前々年度に研究をスタートさせた求電子剤にケトン類を用いる不斉アルドール反応については、当該年度においてさらに研究を進め、前年度に確立した最適反応条件を用いて基質の一般性を検討し、様々な目的生成物が高い収率かつ良好なジアステレオ選択性とエナンチオ選択性で得られる事を見出した。また不斉N-ニトロソアルドール反応については、前年度に続き反応条件の検討を行い、エナンチオ選択性の向上を達成した。さらに、この不斉アルドール反応や不斉N-ニトロソアルドール反応の反応システムを応用したイサチンイミン類の不斉マンニッヒ型反応の研究にも着手し、良好な結果を得ている。不斉アルドール反応や不斉N-ニトロソアルドール反応、不斉マンニッヒ型反応については、その予備的成果を学会で発表している。
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