研究実績の概要 |
リンを含む化合物は数多く知られているが、その多くはリン酸などの酸化体やホスフィンなどの飽和骨格を含むものである。含リンヘテロ芳香族化合物は、ヘテロ原子の特異な性質がπ共役系に影響を与えることから、興味深い物性を示す。そのため、材料および配位化学分野での応用が期待される化合物である。しかしながら、通常、リン-炭素多重結合は合成が困難であり、その構築法は限られている。そのため、新たな合成法の開発とそれに基づく新規化合物の反応性、物性研究は重要であるといえる。 最近、本研究代表者らはリン-炭素三重結合を有するホスファアルキンと呼ばれる化合物を出発基質として、遷移金属触媒を適用することで、リン-炭素二重結合を含む含リン芳香族化合物の合成が可能であることを見出した。この新たな手法により、これまでに、鉄触媒を用いたホスファアルキンとアルキンの[2+2+2]環化付加反応に成功している。本研究課題においては、より興味深い合成ターゲットとしてリンと窒素を含む5員環の1,3アザホスホールを目的に、種々の遷移金属触媒を検討した。 検討の結果、銅触媒が有効であることを見出し、これを用いたホスファアルキンとイソシアニドの[3+2]環化付加反応に成功した。本手法では、様々な置換基を有する種々の1,3-アザホスホールの合成が可能であった。また、鍵活性種となる銅二核錯体の単離にも成功し、反応機構の詳細を明らかにすることに成功した。 また、ここまでに得られた知見を基に、1,2,4-アザジホスホールの合成法も見出すことができた。
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