研究課題/領域番号 |
16K05768
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
前川 博史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (70283041)
|
研究分担者 |
山本 祥正 東京工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (90444190)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マグネシウム / 電子移動 / 還元 / 環境調和 / 有機合成 / カップリング / 脱離基 |
研究実績の概要 |
カルボニル基のβ位に脱離基としてトリフルオロメタンスルホニルオキシ基(TfO)を有するクロトン酸エチルをアセト酢酸エチルから合成し,DMF溶媒中でマグネシウム還元シリル化反応を行ったところ,脱離基とトリメチルシリル基が交換した化合物が好収率で得られた。溶媒としてNMPを用いた場合も同じ生成物が得られたが,DMFを用いた時の方が収率は良好であった。これまでに報告したカルボニル基のβ位に脱離基を有する桂皮酸エチルのマグネシウム還元反応ではTHFを溶媒として用いることができたが,脂肪族の誘導体では同様な反応条件下では反応は進行せず,還元電位の違いが主な原因であると考えられる。得られたシリル化生成物はDMF溶媒中でマグネシウム還元できない還元電位を有するため,さらなるシリル化反応は進行せず,モノシリル化反応後に反応は停止し,芳香族の誘導体と対照的な結果となった。 また脱離基を有してカルボニル基が共役していないアルケンとして,アセトフェノンからα位にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を有するスチレンを合成し,NMP溶媒中でそのシリル化反応を行ったところ,好収率で脱離基とシリル基が交換した化合物が得られることを見出した。芳香環に置換基を有する誘導体やケイ素上の置換基がメチル基以外のものでも反応は円滑に進行して対応するビニルシランが得られることがわかった。一方,トリフルオロメタンスルホニルオキシ基を有するスチレンはフェニルアセチレンの等価体であると考えられるので,同様な条件下でフェニルアセチレンの反応を行ったところ,反応は全く進行しなかった。本反応でもトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を有するクロトン酸エチルと同様に生成物がマグネシウム還元を受けない還元電位を有するため,脱離基とシリル基の交換が起こった時点で反応は停止するものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,脱離基を有する桂皮酸エチルの脱離基とシリル基の交換反応を脱離基を有する脂肪族共役エステルへ展開し,その反応性の違いを明らかにした。またカルボニル基が共役系に入らない脱離基を有するスチレン類に反応を応用し,同様に脱離基とシリル基を交換することができることを見出した。これらの反応は本研究の当初の計画にはなかったものであるが,新たな発見で,明確な進展が見られており,平成29年度の研究はおおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究結果から,新たに進展した研究を元に,平成30年度も引き続き関連する研究を行い,この2年間の研究成果の一般性の拡張を試みる。またシリル化反応と比較して収率が低い炭素ー炭素結合形成反応について,収率の向上を試みる。さらに当初の計画に記している新たな研究についても,並行して実施する。
|