研究実績の概要 |
遷移金属触媒による炭素―水素結合の変換反応は、標的分子を短工程かつ副生成物を最小限に抑えながら合成できるため、きわめて有用な分子変換手法である。現在、sp3炭素―水素結合の活性化反応が適用できる化合物には大きな制約があり、その改善が急務である。本研究では、これまで困難であったカルボニル化合物やアミン化合物のsp3炭素―水素結合の活性化・官能基化を達成することを目的とするものである。 前年度、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの窒素原子上にさまざまなカルボキシラートが置換した基質を、一酸化炭素雰囲気下でパラジウム触媒と塩基を添加して加熱撹拌すると、窒素原子のβ位の炭素ー水素結合が活性化されて一酸化炭素が挿入することで、βーラクタムが生成することを明らかにしていた。この触媒反応の収率を向上させるためにパラジウム上の配位子を種々検討したり、反応温度や溶媒なども詳細に検討を行なったが、収率の向上は見られず、最適条件を見つけることはできなかった。一方、一酸化炭素源として使用している一酸化炭素ガスは、取り扱いの仕方によっては危険であり、また、溶媒への溶解性が乏しいため、本反応を効率的に進行させるためには他の一酸化炭素源を用いることが効果的であると考えた。そこで、一酸化炭素ガスを放出することが知られているさまざまな金属カルボニル化合物の添加を試みた。しかしながら、反応効率の改善は見られず、効果的ではないことが明らかになった。
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