研究課題/領域番号 |
16K05779
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
花本 猛士 佐賀大学, 理工学部, 教授 (20228513)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | モノフルオロメチル基 / トリフルオロメチル基 / ビニルスルフィド / ビニルスルホニウム塩 / 選択的臭素化 |
研究実績の概要 |
モノフルオロメチル基導入のための新規ビルディングブロックとして、γ-フルオロ-β-アセトキシプロピルジフェニルスルホニウム塩の合成に成功した。この化合物は、市販のエピクロヒドリンから4段階で合成できる。各反応ステップの収率も高く、かつ反応操作も容易である。得られた化合物は白色固体で室温で安定で取扱も容易である。 この化合物は反応系内で塩基の作用により、対応するβ-モノフルオロメチルビニルスルホニウム塩に変換される。このビニルスルホニウム塩を用いて、従来合成が困難であった、モノフルオロメチル基を有する、シクロプロパン誘導体、ピペラジン誘導体、アジリジン誘導体の合成を達成した。これらの成果は学術雑誌に投稿して受理されすでに公開されている。 一方、トリフルオロメチル基を有する新規な含フッ素ビルディングの開発も行った。その結果、従来は2つの異性体混合物として合成されていたβ-ブロモ-β-トリフルオロメチル-ビニルスルフィドの一方の異性体のみを合成する方法を見いだした。これにより(Z)-β-ブロモ-β-トリフルオロメチル-ビニルスルフィドが簡便に合成出来るようになった。この化合物の有用性の一つを示す目的で薗頭クロスカップリング反応を検討したところ、対応するトリフルオロメチル基を有するエンインスルフィドが高収率で得られることも見いだした。 上記二つの含フッ素ビルディングブロックの開発・合成に成功し、引き継ぎそれらを用いた合成反応に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モノフルオロメチル基を容易に有機化合物へ導入出来るための合成中間体の合成に成功した。その合成に関しては、通常の実験室の設備で行えること、原料等の入手も比較的容易であることから、実用性も高いと言える。一方、ジフルオロメチル基導入反応については、原料の入手困難の問題から進展が出来なかったが、その代わりにトリフルオロメチル基を持つ新しい中間体を合成することに方針を切り替え実際にその合成に成功した。その中間体は(Z)-β-ブロモ-β-トリフルオロメチル-ビニルスルフィドで、市販の3,3,3-トリフルオロプロペンからわずか2段階で、かつ高収率で得られることから、今後の合成反応展開に期待が持たれる。
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今後の研究の推進方策 |
モノフルオロメチル基を有する新規な化合物を合成する。また、トリフルオロメチル基やジフルオロメチル基が反応性に与える効果とモノフルオロメチル基が反応に与える効果の違いを明らかにしていく。すでに現時点で、ある一つの変換反応を行った際の立体選択性に関して、トリフルオロメチル基とジフルオロメチル基が与える効果とモノフルオロメチル基が与える効果の違いが観測されている。 また、トリフルオロメチル基を有する(Z)-β-ブロモ-β-トリフルオロメチル-ビニルスルフィドを用いた実用的なトリフルオロメチル基含有化合物の合成を図る。比較的簡単な低分子化合物にもかかわらず、変換可能な官能基(臭素ならびにスルファニル基)を2つ持つなど利点が多い。すでに、これを用いた変換反応を検討して従来合成の困難なトリフルオロメチル基を有するエナミンの合成にも成功しているのでさらなる展開を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に学科長を務めることになり、予定外の業務が追加され多忙になり研究・指導にさける時間が減った。また、当初予定していた国際学会への参加も他の業務が重なり取り止めざるを得なかった。さらに、主要な機器分析機械である400MHzNMRが故障して数ヶ月間使用できないなど予定外のことも重なり予算の執行に支障をきたしたため。
昨年度参加出来なかったフッ素の国際学会(22nd ISFC、イギリス)の代わりに、別のフッ素の国際学会(19th ESFC)がポーランドのワルシャワで開催されるので参加、発表する。また、国内で開催される学会にも積極的に参加する。 研究関連では試薬、高圧ガス等の消耗品の他、昨年に引き続き、機器分析費の支払いも予定している。
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